ヨーロッパ飼料業界においての養豚、家禽への高植物蛋白質の利用
ジュリアン・ワイズマン博士
アメリカ大豆協会家畜栄養コンサルタント
(英国ノッチンガム大学)
ステップアップ養豚・養鶏セミナー2001 2001/05/28
はじめに
動物飼料業界は世界的に植物蛋白質源に依存をしようとしている。その理由に漁獲量の減少とヨーロッパ において内臓を用いた飼料による問題が持ちあがってきているためである。家畜飼料の肉骨粉は英国では数年前に使用禁止となっており、EU連合においても最近使用禁止となった。これらの規制は短期のものであるが、規制が継続されることは確実である。この禁止措置の継続の後ろ盾となる科学的な原則は疑わしいかもしれないが、家畜飼料に未加工の動物蛋白を用いることに疑問を投げかけているヨーロッパの消費者団体により支配されつつあるのが現状である。(世界の多くの部分がそれらの家畜飼料産業でまだ哺乳動物の内臓を飼料として利用し、レンダリングも安全であることから今後も継続して行く)
幾分か不公平な見方による一般的な議論は「草食動物」としての家禽と豚への動物性蛋白質給餌は不自然であるとしていることである。この仮定が論証可能な誤りにもかかわらず(豚、特に家禽は実際「雑食動物」である − 豚がもし自由に土地を歩き回れるならば、ミミズを好んで摂取するであろう。野にいる家禽は昆虫や幼虫を摂取している)、動物栄養の基本的な前提と相反して、(動物は栄養素とエネルギーとなる原料を要求しているのであって「未加工物質」として要求しているのではない。いずれにせよ未加工物質は消化されるのではあるが)小売段階において哺乳類、魚類の蛋白質を用いることに圧力をかけてくるであろう。
すべてのマメ科植物は、程度の大小はあれ、比較的に穏当な栄養価値を持っている。 総蛋白質量が低いこと、必須アミノ酸(特にメチオニン)が比較的に不足気味であること、非栄養要因(トリプシン、キモトリプシン抑制因子、レクチン、抗原性蛋白質、タンニン、アルカロイド、フィチン態)が含まれていること、そして比較的消化しにくいことなどの理由も挙げられる。マメ科以外の植物の蛋白質も類似の問題を持っている(例えば菜種粕のグルコシノレート)。 これらのマイナス点を改善すべく大きな改善が試みてこられた。
植物蛋白質の処理がこれらの利用の基本的な局面である。処理制御の精度を含めてまだ大きく改善すべき点は数多くあるが、熱不安定の非栄養要因(ANF)は加熱処理によって大きく減少することができてきている(表1、2)。当然のことながら、熱安定性のANFを熱処理で減少することはできないし、これらを含む原料は育種改良によってANFを減少させてきている(例:ダブルゼロあるいはトリプルゼロと呼ばれるカノーラ)。加えて、エンドウ豆のようなマメ科植物にはANFはごくわずかの濃度であることもある。エンドウ豆のプロテアーゼ抑制因子はしばしば案税ともなされる数値よりも低いことがあるが、変動幅が大きいために今後も考慮するに値し、飼料業界も品質の安定化を図る上で考慮すべき問題となっている。
ヨーロッパで近年エンドウ豆、そら豆とルーピンのような自家製のマメ科植物を発展させる( ワイズマンとコールによるレビュ、1988)重要な努力があった。 これらの作戦は、肉骨粉と結び付けられた問題が重要になる前に、そして輸入植物蛋白質に対する依存を減らすヨーロッパの中の一般的な動きの一部であった、このような政策は最初に比べて弱くなっているが、しかしそれはまだ存在して栄養の価値と生産の容易さを改善することであった。こののペーパーは大豆製品のより重要な部分を考慮する物である。(ヨーロッパに輸入される主な植物蛋白質は加工済みあるいは生の大豆である)
大豆製品
主要な植物蛋白商品として、大豆(抽出大豆ミールと非抽出の「全脂」製品としての両方とも)は飼料原料としてより重要な位置にある。 現在、例えば、年間家畜飼料生産量が6百万トンのUKでの最も大きい飼料会社の1つが大豆ミール単体でおよそ50万トンを使う。 動物性蛋白質の使用規制で、この数字は将来増加する可能性が高い。 ヨーロッパで栽培されたマメ科植物はEUで総植物蛋白質使用のおよそ35%以下となる。
大豆はまだそれらの主要な位置を保ち、そしてUKは毎年百万トン以上を輸入している。 大豆製品の使用の例として、図1Aと1B が、1988年の二つの飼料会社によりブロイラー飼料に用いられた「ハイプロ(脱皮)」大豆ミールの使用を表している。(去年データが公的に利用可能であった時)特別の原料を使用する要因は栄養価値が元となっている。しかし、栄養価値の安定性、価格、供給の安定性なども考慮されなければならない。
飼料原料使用の増加に伴う決定は配合設計の中で行われる。不幸にも、大豆製品の利用増大の障壁が障害としてまだ存在する。 これの理由は明確である。 大豆製品の栄養的な変動が問題となっている。さらに、非栄養の要素についての情報とそれらを破壊する情報(あるいは、少なくとも、それらの受容できるレベルへの縮小)の豊富さにもかかわらず、非栄養要素とそれらの量と家畜の現場においての成績との関係の知識が一般的に欠如している。 この不明確さが大豆製品の使用を妨害している。その結果として飼料配合設計による経済効果とその商品の信頼効果に対して大きな影響をもたらしている。
大豆製品の栄養品質の多くは、貯蔵や処理過程に作用することから、様々な場所からの大豆ミールには大きな変化がる。加えて、一つの場所からの大豆がそれらの蛋白質含量に幅が出るかもしれない。 最近まで、大豆ミールは植物油の副産物として考えられてきた。しかし、非反芻動物飼料業界においての大豆ミール使用の増大は大豆ミールの適切な処理を強調してきた。今日まで、例えば、相当数の業界の興味があるにもかかわらず文献には加熱大豆ミールの品質のばらつきについて少しばかりの情報が記されている。
基本的な分析的なデータ
養豚、家禽用飼料配合に用いる飼料原料の化学的分析値の情報はかなりの数文献として発表されている。しかし、テキストがしばしばただ限界あるいは可変性を示さないであろう平均の値を発表するだけである。 飼料業界は大豆製品における品質管理においては異物、外面、粗蛋白質を見、発表された分析値に信頼を置くよりも幾つかの会社は自分の実験室での分析に信頼を置いている。発表された分析値に全幅の信頼を寄せることは薦められない。これら三つを計測することは、飼料配合設計に用いる大豆製品の品質を考慮するとき重要である。しかしこれらが唯一の判定基準ではない。この他の項目として繊維含有量、(これは豚、鶏が消化できない細胞壁をも示すために非常に重要な指標である。大豆製品において高繊維質は同時に何らかの他の植物あるいは豆皮が混入していることも示す)灰分(高灰分は土などの混入を示し、クリーニングが適切に行われなかったことを示す)もある。他の計測項目として非常に重要なものはアミノ酸組成である。豚、鶏の両方において必須アミノ酸となっている三つのアミノ酸がある。(リジン、メチオニン、トレオニン)
アメリカ大豆協会によって最近行われた調査の中で、独立した分析機関を用い、違った場所で栽培された異種の大豆の基本的化学組成が計測された。(Clarkeと Wiseman 、1999)結果は表2Aに示されている。脱皮大豆ミールが飼料原料として重要な位置をしめるようになってきている。興味あることに栽培地によって品質にばらつきがあることが示されている。さらに興味が引かれることとして変動係数(CV)がある。(表2B)これは計測された資料の幅を示す物である。(この数字が小さければサンプルは均一化されていることになる)アミノ酸含有については産地間の差は大きく見られなかった。(これは大豆蛋白質そのもののアミノ酸組成が安定していることを示す)しかし、重要なものはCV値の限界である;数値が大きければ、それだけデータの変動性がより高い。 従ってそれはそれぞれの地理的な地域による化学組成に標準値を用いることは薦められない。繊維のCVは特に変動幅が高い。これは幾つかの地域において製品のばらつき度合いが非常に高いことを示している。この変動幅が大きいということは、豚、鶏の成績にも大きなばらつきが出てくることを示していることを忘れてはならない。
処理
2の主要なANF(トリプシン抑制因子とレクチン;両方とも熱による分解が可能)を破壊するための大豆の処理について出版された相当量のデータがあり、そしてこのペーパーでこれらの出版物を繰り返すことはされない。処理において最も重要な項目は、その項目の機械を使われたか否かではない。多くの文献では機械「A」と「B」を比較している。三つの処理条件(温度、時間、湿度)が示されなければこれら比較の価値は非常に小さくなる。最適な品質の製品を作るためのこれらの変数を制御することはもっと重要なことである。
ノッチンガム大学の家禽と養豚の最近の研究は上記の三つの処理条件が消化率と豚、鶏の成績に与える影響を確かめた。
最初の試験は、4種類の大豆ミールの栄養価値を計測するように計画された。全ての商品は最適な処理を行われているとされることを明示するトリプシン抑制因子量が4mg/g以下であった。トリプシン抑制因子活性と共に、主な3種類のアミノ酸(リジン、メチオニン、トレオニン)の回腸消化率の結果は図2に示してある。回腸消化率は一般に全体のアミノ酸含有量、あるいは総消化率よりいっそうきめ細やかな栄養の品質の測定であると見なされる。 このデータで面白いものは生産国が重要であるように思われるということである、しかし処理を行った国もそうである。 処理の制御の度合いは可変的であるように思われる。
アミノ酸消化率は変動するが、まずい処理の生理的結果はより低い栄養価の大豆ミールが膵臓の大きさに影響を与える。図3が示すように、トリプシン抑制因子の摂取により逆効果となっていることが分かる。(飼料中の抑制因子量=飼料摂取量で換算)特に家禽においてトリプシン抑制因子を多く摂取した場合、膵臓肥大による膵液分泌がより多くなる。
離乳子豚と関連はよく知られている。(Varley & Wiseman, 2001)それは生理的に未熟であるために消化に困難さがある。最適なプロテアーゼ活性にはpH3.5以下である胃酸が不十分な塩酸生産のために時折高くなる。胃内容物の混合も不十分となり、蛋白質の消化が怪しくなってくる。同等に重要なこととして、微生物が生き残り、小腸へと侵入してゆくことである。未消化の蛋白質は微生物にとっての栄養源となり、基本的には有毒であり、腸内表面の粘膜を破壊する芳香族アミノ酸、生成アミンと共にアンモニアの精製が行われる。もし当初認識されたマメ科植物の問題が(ヨーロッパで普通になっている飼料用抗生物質の使用減少と一緒に)このシナリオに加えられるならば、その結果はもっと深刻なものとなる。
大豆製品と結び付けられた栄養の問題を克服することにおいての進歩があったが、それ以上の発展が養豚栄養の問題に挑戦することになる。より確実な処理制御の必要が家禽用飼料において述べられたが、これは養豚においても同様に重要なことである。家禽飼料についての論議と同じように、それは高い品質の大豆ミールを生産することにおいて価値ある処理装置の名前ではない、しかし処理は営業を左右することがある。 トリプシン抑制因子が大豆ミールにおいては主な問題であるように、子豚成績と生理学に対して相反する効果を持つのはこれらのANFの摂取量である。 ノッチンガムの大学においての最近の実験がさまざまなTIA摂取量を離乳後の子豚で調べた。代表的に図4(成績)と図5(消化器官形態学)において示されている。もしある商品のTIAの量が分かっているなら、(TIA摂取を最小限度に留めるための)配合割合は計算される。豚生理学において飼料効果の研究は、腸絨毛が栄養吸収の生理学的制御を行うことからしばしば腸絨毛形態学に集中される。飼料が腸生理全体に関係があることから、ヨーロッパにおいて近年、成長促進剤を配合することが禁止され、絨毛構築に効果的な飼料に興味が持たれ始めている。
結論
植物蛋白質がヨーロッパにおいてより重要になってきている。これはさらに「自家製の」マメ科植物の生産に対しての興味として見せかけてきた。しかし同じく最適な栄養の価値の大豆ミールを作り出す処理条件の重要性も増加してきた。処理装置の名前が使われること考慮するだけでは十分ではない。 処理に関係している主要な変数(温度、時間と湿気)を制御する方法を理解して、そして高い栄養の品質の商品生産のために装置が正確に操作されることを保証することはいっそう重要である。
参考文献
- Clarke, E.J. and Wiseman, J. (1999). Nutritional Valeu of Soya products for non-ruminant farm animals. American Soybean Association.
- Griffiths, D.W. (1984). Journal of the Science of Food and Agriculture 35, 481.
- Valdebouze, P., Bergeron, E., Gaborit, T., and Delort-laval, J. (1980). Canadian Journal of Plant Science 60, 695.
- Varley, M.A. and Wiseman, J. (2001). ‘The Weaner Pig’. Occasional Meeting of the British Society of Animal Science, CAB International.
- Wiseman, J and Cole, D.J.A. (1988). European legumes in diets for non-ruminants. In “Recent Advances in Animal Nutrition 1998”. Eds W. Haresign and D.J.A. Cole, Butterworths. London.
表1. マメ科植物のプロテアーゼ抑制因子含量
(単位:抑制酵素/mg)
| マメ科植物 |
トリプシン抑制因子活性 |
キモトリプシン
抑制因子活性 |
| マメ全体 |
マメ皮と種子 |
子葉 |
マメ全体 |
| Faba Beans a |
3.3-6.2 |
0 |
6.9 |
|
| 冬作 |
4.1 |
|
|
|
| 春作 |
4.5 |
|
|
|
| Faba Beans b |
1.41-1.56 |
|
|
0.38-0.77 |
| エンドウ豆a |
2.9-10.8 |
0.6 |
7.8 |
|
| 冬豆丸 |
10.3 |
|
|
|
| 冬豆しわ |
7.9 |
|
|
|
| 春豆丸 |
4.9 |
|
|
|
| 春豆しわ |
2.7-3.7 |
|
|
|
| エンドウ豆 b |
|
|
|
|
| 丸 |
0.15-1.07 |
|
|
0.74-3.86 |
| しわ |
0.66-4.62 |
|
|
2.44-10.24 |
| 生大豆ミール a |
59.4 |
|
|
|
a: Valdebouzeら(1980)、乾物換算
b: Griffithsら(1984)、現物換算
表2.マメ科のフィトヘマグルチニン(植物凝集素)含量
(単位:U/mg、ウサギ赤血球による)
| Faba Beans |
25 - 100 |
| エンドウ豆 |
100 - 400 |
| 生大豆ミール |
1,600 - 3,200 |
Valdebouzeら(1980)
表2A.大豆ミールの様々な分析
| 分析場所 |
栄養素(g/kg) |
アミノ酸(g/kg) |
| 粗蛋白質 |
粗繊維 |
灰分 |
リジン |
メチオニン |
トレオニン |
| 米国脱皮 |
481 |
28.8 |
62.1 |
30.4 |
6.8 |
18.7 |
| ブラジル |
435 |
52.1 |
57.3 |
28.4 |
6.3 |
17.8 |
| アルゼンチン |
435 |
55.4 |
58.9 |
27.0 |
6.3 |
17.2 |
| インド |
468 |
58.9 |
71.1 |
28.6 |
6.5 |
17.9 |
| 中国 |
450 |
52.0 |
41.6 |
27.4 |
6.4 |
17.6 |
栄養素は乾物88%にて表示。
分析は下記の4ヶ所の分析所の平均値
分析場所:
USB: Woodson Tenent Laboratories, Des Moines and Iowa State University Grain Quality Laboratory
Novus: University of Missouri, Department of Agriculture Chemistry
ADM: ADM Laboratories, Decatur, Illinois
Degussa: Degussa Feed Analysis Laboratories, New Jersey, USA ad Frankfurt, Germany
表2B. 表2Aの分析値の変動係数
| 分析場所 |
栄養素(g/kg) |
アミノ酸(g/kg) |
| 粗蛋白質 |
粗繊維 |
灰分 |
リジン |
メチオニン |
トレオニン |
| 米国脱皮 |
1.6 |
9.5 |
6.1 |
4.0 |
5.5 |
4.1 |
| ブラジル |
3.2 |
23.7 |
5.2 |
3.3 |
6.3 |
3.8 |
| アルゼンチン |
2.6 |
16.3 |
4.3 |
5.0 |
5.9 |
4.2 |
| インド |
2.4 |
17.3 |
7.4 |
7.1 |
5.7 |
3.7 |
| 中国 |
2.3 |
5.6 |
-- |
2.9 |
4.3 |
3.2 |
|