アメリカ大豆協会

瀬良英介ニュースレター

瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2007年1月 (152)

酪農や畜産を学べる米国の大学や短期大学の近況

日本で酪農や畜産を学べる大学は相当数あります。本論では、酪農や畜産を留学して学ぶことができる米国の大学や短期大学の近況をいくつかの例を挙げて触れたいと思います。日本の大学には日本の大学の強みがありますが、米国の大学には日本とは違った意味の実践力をつけ、基礎を教える強みがあります。特に酪農を含む大動物については日本では求めることが難しい角度から幅広く学ぶことができます。

かねてから北米の酪農関係の大学については、ホルスタイン種機関誌のホルスタイン・ワールドなどで時折紹介されていましたが、近年では、セレクトサイアーのような畜種会社やデーリィビジネスを発刊している酪農業界専門誌などの協力も得ながら広く紹介するようになりました。明日のリーダーのための2007年酪農大学案内は、全てを網羅しているわけではありませんが、約38校をカナダと米国25州から紹介しています。それらは、ホルスタインワールドにアクセスすれば詳細が得られますが、下記にいくつかの大学の所在地、授業料、食費・寮費など、また、大学のサイトを2007年度案内から御紹介したいと思います。

先ず、個人的独断と偏見により、私の母校であるアイオワ州立大学について触れます。中西部の穀倉地帯の中心であるアイオワ州エイムス市にあり、総学生数は約25,462人、酪農関係科目を取っている学生が51人、酪農学科長はダグラス・ケニーリィ教授(Prof. M.Douglas Knealy)です。農学部以外に、農業経済学部、作物学部、物理学、化学、情報システム学など多方面に渡る総合大学です。おおよその授業料は、州内の学生であれば年間$4,980、州外の学生(留学生も州外)であれば年間$14,980、本代が年間$750、年間食費込み寮費は$6,378です。ですから、$1=120円で計算すれば、留学生や州外学生は初年度で最低265万円ほどかかります。順調に4年で必須単位や選択単位を全て取得して卒業できるとすれば、大学関係だけで最低1,060万円かかることになります。秋の入学(新学期)のための願書提出は通常1月1日までであり、学部などで出しているスカラーシップに応募提出は通常(前年の)11月1日までになっています。大学の食堂など諸々のパートタイムで働きながら学業を続ける方法、連邦政府や公的機関の教育資金などを受ける方法(日本の育英資金に似ている)もありますが、留学生の場合は、語学力の問題もあるので勉強の方で精一杯になりますから、パートタイムで働くのは易しくないでしょう。ただ、2007年の夏から搾乳牛500頭規模の研究・教育・普及農場が新設され、数年かけて設備も充実されますので、酪農学科生は実践的な作業訓練を受ける意味でも新設農場でパートタイムとして働くことが以前よりも出来るようになるでしょう。学位としては、酪農、又は、畜産の4年生BSで、これらにはオプションとして更に獣医学部の前段階(プリヴェット)に進める選択もあります。MSとPhD(修士と博士)は、家畜栄養学、育種学と遺伝学、動物生態学や行動学、動物生理学、食肉学、一般動物学などで、獣医学博士は獣医学部の必須を全てクリアしてから授与されます。サイトは、www.iastate.edu/admissions,www.ans.iastate.edu/centers/dairy などです。

デーリィエクスポなどでも有名なウィスコンシン州は日本でも酪農のメッカとして知られていますが、ウィスコンシン大学マジソン校は総学生数が約41,480人、酪農・農学関係の経営、生産システム、自然科学、国際関係、企業酪農経営管理、農業ジャーナリズムなど農学部では酪農を中心に多方面にわたっている総合大学です。酪農学部長はリック・グラマー教授(Prof. Ric Grummer)です。日本ではランディ・シェーバー教授 (Prof. R. Shaver) がよく知られています。おおよその授業料は、州内の学生であれば年間$6,730、州外の学生(留学生も州外)であれば年間$20,730、本代が年間$890、年間食費込み寮費は$6,920です。ですから、$1=120円で計算すれば、留学生や州外学生は初年度で最低362万円ほどかかります。順調に4年で必須単位や選択単位を全て取得して卒業できるとすれば、大学関係だけで最低1,370万円かかることになります。秋の入学(新学期)のための願書提出は秋の入学に対して通常2月1日までであり、春の入学に対しては11月15日までです。短期のショートコースを受ける学生は、授業料は正規のほぼ半額になります。ショートコースの秋の受付に対しては10月1日までです。酪農学部では約40人の学生をパートタイムで雇い、デーリィキャトルセンター、事務所、研究所関係などで働いてもらっています。その他に、近在の酪農家でのパートタイムもあります。実践を伴うインターンシップは必須です。デーリィエクスポでのパートタイムもあります。ウィスコンシン大学は本校であるマジソン校以外に州内にプラットヴィル校やリバーフォールス校もあり、それぞれが異なる教科を教え、授業料や寮費なども異なります。ウィスコンシン大学のサイトは、www.wisc.edu/dysci です。

穀倉地帯の中心にあるイリノイ大学はイリノイ州アーバナ市にありますが、アイオワ州立大学同様に養豚学でも著名です。酪農では、マイク・ハッチェンス教授 (Prof.M. Hutjens) が日本では著名ですし、ホーズデーリィマン誌の飼料と栄養関係の彼の記事がよく読まれています。この総合大学の学生総数は約40,670人です。酪農学部長はニール・メルシェン教授(Prof. Neal R. Merchen)です。おおよその授業料は、州内学生が年間$9,966、留学生(州外学生)が年間$24,052、本代が年間$1,000、食費と寮費が年間$7,716です。ですから、$1=120円で計算しますと、州外学生や留学生の場合、年間の最低経費が約393万円、4年で卒業できるとして計算すれば約1,573万円かかります。サイトは、www.ansci.uiuc.edu です。

米国東部のアパラシアン地域になるとペンシルバニア州立大学がペンシルバニア州ユニバーシティパーク市にあります。この大学の酪農学部は、ジャド・ハインリックス教授 (Prof. J. A. Heinrichs) が日本でも著名です。この総合大学の学生総数は40,000人ですが、農学部の学生数は2,200人、畜産学科には290人、酪農学科には100人居ます。酪農学科長はテリー・エサートン教授(Prof. Terry Etherton)です。願書受付の締め切りはありませんが、出来れば11月30日前に提出をということです。授業料は、州内学生がおおよそ年間$12,851、州外学生や留学生は年間約$22,194、本題が年間約$1,360、食費と寮費が年間約$7,400です。したがって、$1=120円で換算すると、州外学生や留学生の場合、年間の最低経費が約371万円、4年で卒業できるとして約1,485万円かかります。サイトは、www.das.psu.eduです。

米国東部ではニューヨーク州イサカ市にあるコーネル大学が有名な総合大学です。この大学のラリー・チェース教授(Prof. L. Chase)が日本でも著名です。学生総数は約12,000人で、酪農学科に在籍する学生数は150人です。酪農関係のコンタクトは、デイヴィッド・ギャルトン教授(Prof. David Galton)です。願書受付の締め切りは1月1日です。年間授業料は、州内学生がおおよそ年間$15,000、州外学生(留学生)$25,000、本代が$300、食費と寮費が$6,500です。州外学生や留学生の場合、費用を$1=120円で換算すると、年間の経費が約382万円、4年で卒業できるとして約1,530万円です。

ここに御紹介したのはほんの一部ですが、これらの大学以外にも2年生の短期大学や4年生大学が米国、カナダ全域に広く点在しています。カナダ国オンタリオ州のゲルフ大学ケンプトヴィル校は、主に酪農関係の2年生短期大学として存在しますが、ここでは実践的な面と基礎を教え、現場で役立つ教育を行っています。卒業後に、オプションとしてゲルフ大学本校やそれ以外の4年生大学に入り、2年制で取得した単位を生かすことができます。このようなシステムは、米国でも同じで、ニューヨーク州の州立大学コブルスキル校やカリフォルニア州モデストのモデスト・ジュニア・カレッジなど数多くの短期大学があります。

余談ですが、私の母校のアイオワ州立大学は1858年創立(安政5年・明治天皇の前の孝明天皇時代)のランド・グラント・大学ですし、過去の経緯から教員を要請することが目的の一つでしたから、授業料などは他の公立大学や私立大学よりはかなり安いことで知られていますが、同時に厳しいことでも知られています。成績がおぼつかない学生の相当数は初年度で居なくなり、他の「易しい」大学に移ります。また、やりたい事が見つかるまで社会人となり働き、後年にフルタイムの学生として戻ってくる者も居ます。結婚してから目的を明確にして再入学する学生も多いです。これは、他の大学でも見られる傾向ですが。18歳前後で入学した学生は、初年度のみならず、二年目にも居なくなるか退学処分を受ける学生が居ますから、入学時の学生総数を4年後の卒業生で比較すると卒業証書が貰える学生は入学した学生数の半分程度に落とされているのが普通です。私が学生であった50年ほど前は卒業できる割合が厳しい年では40%程度でした。他の州立(公立)大学についても受け入れ数に対して落とす数は小さくないですが、アイオワ州立大学は厳しいほうかもしれません。また、アイオワ州立大学のみならず他の大学でも傾向は同じですが、講義を黙って聴いてノートを取り、最終と中間試験さえ受けていれば卒業できるというような甘いものではなく、毎回の授業やラボも活発に自分の意見や見解を述べ、教授と議論をたたかわすことが必要です。そのためには、相当な下調べもしなくてはなりません。試験に出るテキストの箇所だけを丸暗記したり覚えていても役立ちません。そのためには膨大な読書量を必要とするので、現在ではトーフルやトーイックの点数がかなり高いことが肝要ですが、一番大事なのは、学生本人に目的とやる気があり、上っ面で体裁を整えることよりも地道に努力し続けることでしょう(瀬良、2007)。

 
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