アメリカ大豆協会

瀬良英介ニュースレター

瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2007年6月 (161)

山羊の人気と飼料

山羊を飼養するときの考え方は羊や他の反芻獣の飼養に似ていますが、山羊の特徴としては非常に品質の悪い山間部の野草・潅木地域などで充分に生存できる動物だということです。山羊は食欲が旺盛で往々にして体重に対して3.5%〜5%もの飼料を乾物重量として食べます。裏返して云えば、体重に対して大量の飼料を摂取できる機能を持っているということは、大量の低質な飼料を食べて生存することができる動物だということです。羊や牛が一般的には体重に対して2.5%〜3%程度の飼料乾物しか食べないことを考えれば明白です。

山羊は他の反芻獣が食べるイネ科・マメ科牧草や乾草、サイレージ、ヘイレージ、濃厚飼料、代用乳、市販配合飼料、サプリメントなど何でも食べられますが、、他の反芻獣が通常は食べることができない潅木の葉、皮、小枝などを前立ちになってでも食べますし、明らかな雑草を食べます。西部のランチャーが山間部などの放牧野地に山羊を「生きた剪定・掃除刈り器」と呼ぶ所以です。

山羊は劣悪な粗飼料でも「飼える」という考え方は基本的には変わっていませんが、やはり、若干でも効果的に乳を生産させるため、肉を生産させるため、或いは、モヘア(山羊の毛)を生産させるための栄養ということでは明らかな違いがあります。その点では、牛や羊の栄養を産乳、産肉などで分けるのと似ています。山羊の推奨栄養標準は米国では米国科学アカデミーの「NRC山羊」がベースに使われています。ただ、体重段階別、維持、妊娠期、産乳、産毛、また、舎飼い、放牧用潅木野地などの状態別に栄養組成分値を細かく分けて蛋白質、カロリー、ミネラルなど一般組成分値などを出していますので生産者が直ぐに使うのには若干不便な面があります。

濃厚飼料として使うエネルギー原料は、とうもろこし、えん麦、大麦、マイロ、小麦や穀類副産物などが使われ、嗜好性を上げるのに製品によっては糖蜜が使われています。蛋白質原料としては、大豆ミール、綿実粕の二種類が一般的に最も広く使われていますが、ピーナッツ粕、ヒマワリ粕、コプラ粕、サフラワー粕、菜種(カノーラ)粕、コーングルテン・フィードやミールなども使えます。それらは、調達量と栄養単位当り価値などの兼ね合いによっては使われています。穀類などは微粉砕などの加工調整をできるだけしないことが好ましく、特に、粗飼料が少なめのときは過剰な加工はかえって山羊の嗜好性や消化性を落とし問題を起しやすいものです。

潅木・野地などに放牧している場合は、サプリメントをペレット形態で与えるのが多いのですが、山羊には後述の問題もあるので、サプリメント飼料を自由摂取で与える場合は摂取量が必要以上に増えないようにするために食塩を製品に相当量使うことで摂取量に制限をかけています。自由接種用(飽食)の放牧用サプリメントには食塩を5%〜40%前後と高濃度に入れて調整する場合が多いのですが、米国では一般的にヨウ素化食塩はこのようなサプリメントには使いません。理由はヨウ素の過剰摂取が起きた場合、山羊に対して毒性問題を起すこともあるからです。食塩を高濃度に入れたサプリメント飼料を与えるときは近場に水が飲めるタンクや小川か池が必要です。

産乳用の山羊の場合、放牧をさせるにしても可能であればある程度は良質な改良牧野が必要ですが、その場合にも放牧で食べさせ過ぎないように牧区の大きさを区切るか、綱でつないでおく必要があります。山羊はネコと違い、つないで飼育することは難しい動物ではありません。特に、低質な野草や雑草を根っこ近くから食べてしまうことには永年慣れていますから、良質な改良牧野の草などを食べさせる場合は草が8センチから10センチ前後に伸びるまで待つ必要があります。そうでないと草自体が再生できません。低質な野草にも同じことが当てはまります。

子山羊のスターターの一つの大雑把な配合例は、とうもろこしが27%、クリンプ・ロールをかけたえん麦が38%、大豆ミール(CP44)が10%、ルーサン・リーフ・ミールが18%、糖蜜が5%、微量ミネラル食塩の1%、残りが炭カルとビタミンADEプレミックスで1%弱程度です。

山羊の育成用飼料(グローワー)の一つの大雑把な配合例は、とうもろこしが13%、クリンプ・ロールをかけたえん麦が10%、大豆ミール(CP44)が9%、ルーサン・リーフ・ミールが9%、綿実のハルが52%、糖蜜が5%、微量ミネラル食塩が1%、残りが炭カルとビタミンADEプレミックスで1%弱程度です。このようなにハルを多く使ったグローワーの場合は月齢が4ヶ月を過ぎていれば、自由摂取でも通常は構いません。

野地放牧用の粗蛋白質40%サプリメントの大雑把な配合例は、とうもろこしが25%、大豆ミール(CP44)を70%。尿素を3%程度、第二リンカルを2%程度、残りがビタミンAをサプリメント飼料1キロ当たり5500IU程度の含有濃度にした添加物です。同じように粗蛋白質30%サプリメントの大雑把な配合例は、とうもろこしが58%、大豆ミール(CP44)を37%、尿素を3%程度、第二リンカルを2%程度、残りがビタミンAを前述の濃度で添加します。尿素は米国では山羊の飼料によく使われます。尿素は濃厚飼料重量の1%まで加えられます。或いは、総飼料給与量の蛋白質の三分の一相当までの尿素を添加できます。似たような製品では、アンモニア化綿実粕、アンモニア化稲藁、アンモニア化柑橘パルプ、アンモニア化ビートパルプがありますが、非蛋白態窒素である尿素やアンモニア化副原料を飼料に混ぜるときは急激に混入しないように注意が必要です。野地放牧用サプリメントは、普通は一日一頭当り100グラムから500グラム程度の場合が多いでしょう。冬季間放牧の場合などは、500グラムを越す必要があるときもあるでしょう。

産乳用山羊の場合は乳量にもよりますが、産乳日量が5キロ前後のときはルーサン・クローバー乾草(CP16%)程度のものであれば一日当り給与量として2キロ程度、濃厚飼料(CP14%-16%、TDN70%)程度のものを3キロ程度与えるのが目安でしょう。イネ科乾草(CP7%)程度のものであれば、一日当り給与量として1.5キロ程度、濃厚飼料(CP16-18%、TDN65%)程度のものを3.2キロ程度与えるのが目安かもしれません。通常の産乳用山羊は、平均産乳日量が2キロ前後、10ヶ月の産乳期間に650キロから750キロ程度の乳量、乳脂は3.8%程度を生産します。

山羊の飼料給与で一番注意しなくてはいけないのは、濃厚飼料などの過剰摂取や急激な配合内容の変更、また、飼料や粗飼料の組合わせを変えたときにおきるエンテロトキシミアです。別名が「食いすぎ病」ですが、これはクロストリディウム・ペルフリンゲン(タイプCとD)に反応しておきる毒性反応ですが、下痢、食滞、行動の統一性が取れない、活気がない、意識朦朧、致死などを伴います。これを防ぐためには、濃厚飼料や穀類、配合飼料の急激な多給、飼育中の山羊が普通に馴染んでいない飼料を急激に与えることなどをしないように注意し、また、前述のトキソイドのワクチンを二回、二週から4週間隔で打ち、産乳山羊には年に一度はブースターを打つという手段が推奨されています。この他にも疾病がいくつかありますが、山羊の場合は、飼料給与や食べすぎに関するものが多いという特徴があります。冒頭で触れましたように、山羊は低質な野草や雑草、潅木などを食べて生存できるように歴史的に永年にわたり変わってきた動物ですから、飼育・経営者の要求に合わせた「生産性」を相応に上げるのには乳牛の飼育などよりも注意が必要だろうというのが私の個人的見解です。

余談ですが、日本国内ではここのところ山羊の人気が急増しているようです。山羊の乳はホルスタイン種乳牛の乳よりも脂肪が若干高いのですが脂肪球の小さいのが多く風味も甘く感じます。山羊の乳が臭いというケースがありますが、それは搾乳している側に雄山羊が居ることで雄の臭いが乳に移るケースが多いものです。人が飲んだときの消化過程では固まるカードがきめ細かい軟らかな状態ですので牛乳を許容できない一部の子供、また、高冷者にとって消化の良い乳であるというのは周知の事実です。加えて、一部の日本のコンシューマーは牛肉以外の肉を種々の理由から求めたいとする向きがあります。肉用の山羊は乳用の山羊とは種類が違いますが、赤身の肉ですので米国やメキシコでも珍重される傾向があります(P良、2007)。

 
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