子豚用の飼料は攪拌が足りないと成績が下がる
カンサス州立大学は以前から飼料製造に関する諸々の研究や普及に力を入れていることで関係者の間では世界的にも知られていることです。グロスベック教授を含む計6名の研究者は子豚の飼料配合に当たり攪拌が足りないと成績が下がる点を報告していますが、興味深い内容ですのでその一部を御紹介しましょう。
簡単な結論をは次のようなことです。プレミックスなど低混入率の添加物・原料が増えてきている近年のナーサリー(授乳)子豚用飼料では飼料の攪拌が不充分(CV > 12%)ですと子豚の成績が下がるというものです。
この研究の目的は飼料原料にクリスタル・アミノ酸、酸化亜鉛、薬剤、ビタミンやミネラル・プレミックスなど非常に低い混入割合の添加物・原料がナーサリー(授乳)子豚の成長成績に与える影響を調べるためのものです。パイロット試験(試験1)では、容積が1360 kgの横型リボンミキサーの攪拌効率を異なる粒度の食塩(440, 730, 2,000, 3000 μm)を使って行っています。用意したサンプル飼料は、集めたときの状態(粉砕なし)のまま、また、サンプル飼料全体を約400 μmの粒度に粉砕したものを評価しています。飼料(907 kg)は混合され、サンプル飼料は混合時間を0, 30, 60, 120, 210, 330, 480, 及び、630秒の8段階に分けて攪拌したあと集められました。サンプル飼料10検体個々の攪拌時間による変動係数が攪拌効率を計るのに使われていますが、測定はクロール濃度でみています。
食塩の粒度 × サンプル検体 × 攪拌時間との相関関係は認められました(p = 0.04)。検体で2,000, 或いは、3,000 μmの食塩粒度(未粉砕、或いは、粉砕)が好ましいと言われる攪拌効率の10% CVには決して到達しませんでした。食塩粒度が440 μm(未粉砕、或いは、粉砕)、または、食塩粒度が730 μm(粉砕)が攪拌効率のCV < 10% を正確に得るのにそれぞれ330秒と630秒が必要でした。
試験2では180頭の離乳子豚(PIC, 体重6.31 kg ± 0.84 kg、21日令 ± 3日)を使い2段階フェーズの給与試験(0-14日、14-28日)を行っています。飼料試験区には飼料(440 μm 食塩粒度)を 0, 30, 60, 120, 或いは、330秒攪拌したものを使っています。サンプル飼料はミキサーの中で採集し、それぞれを最初から終わりにいたる順で製造ラベルを表示し、袋詰め(22.5 kg)にしています。そして攪拌効率を測定するためにサンプル採集も行っています。個々の袋を個々のペンに居る子豚に与え、その袋を与え終えると次に続きの袋の飼料を与えています。攪拌時間が増えるにしたがいフェーズ1(0-14日)のミキサーCVは、178, 38, 26, 21, そして、5%を示し、フェーズ2(14-28日)のミキサーCVは、172, 79, 60, 48, そして、26%を示しました。攪拌時間が増えるにしたがいフェーズ1(0-14日)の袋詰め飼料CVは26, 20, 16, 11,そして、7%を示し、フェーズ2(14-28日)の袋詰め飼料CVは56, 45, 40, 33, そして、12%を示しました。
フェーズ1(0-14日)期間で攪拌時間が増えるにしたがい、平均増体日量(ADG)が増加し(1次、P < 0.01)、増体効率(G:F)も増加(2次、P = 0.03)しました。フェーズ1と2を合わせた(0-28日)期間では攪拌時間が増えるにしたがい、平均増体日量(ADG)が増加(2次、P < 0.01)し、増体効率(G:F)も増加(1次、P = 0.04)。これらのデータからナーサリー(授乳)子豚用飼料では飼料の攪拌が不充分(CV > 12%)ですと子豚の成績が下がることが示されています。
試験飼料(原物中)
原料 (%) |
0 – 14日 |
14 – 28日 |
とうもろこし |
52.25 |
65.36 |
大豆ミール、 CP46.5% |
25.56 |
29.97 |
第一リンカル P21% |
1.00 |
1.60 |
石灰石 |
0.50 |
1.00 |
攪拌効率調査用粉砕食塩(食塩粒度 440μm) |
0.30 |
0.35 |
ビタミン・プレミックス |
0.25 |
0.25 |
微量ミネラル・プレミックス |
0.15 |
0.15 |
ネオテラマイシン 10/10 |
0.70 |
0.70 |
酸化亜鉛 |
0.25 |
--- |
L-トレオニン |
0.12 |
0.13 |
L-リジンHCL |
0.30 |
0.35 |
DL-メチオニン |
0.18 |
0.15 |
魚粉(メンヘイデン) |
3.75 |
--- |
スプレー乾燥ホエー |
15.00 |
--- |
計 |
100.00 |
100.00 |
計算分析値 |
|
|
総リジン、 (%) |
1.45 |
1.35 |
ME、(kcal/kg) |
3,272 |
3,276 |
CP、(%) |
20.36 |
19.49 |
Ca、(%) |
0.78 |
0.80 |
P、(%) |
0.75 |
0.73 |
有効リン、(%) |
0.48 |
0.41 |
リジン:カロリー比 (g/Mcal) |
4.43 |
4.12 |
研究者は報告の中で養豚飼料には合成アミノ酸や濃縮度の高い飼料添加物を使う傾向が増えてきているので均一に飼料を混合攪拌することがより重要になるとしています。また、粉砕した食塩を使うことによりミキサーの適切、且つ、正確な攪拌時間が判るとしています。もし、粒度の粗い食塩が使われる場合は、サンプルを分析前に粉砕するほうがミキサーのパーフォーマンスをみるのによいとも指摘しています。研究者は平均増体日量(ADG)が改善されている本報告結果から判ることはナーサリー子豚の最大パーフォーマンスを得るのには低いCV (7%-12%)が理想的だとしています。
本報告は、表6点と図1点を入れた計6頁の論文です。このトピックスの詳細に興味のある方は米国畜産学会誌(J. Anim. Sci. 2007. 85:1793-1798)を参照なさることをお勧めします。尚、本トピックスで御参考までに引用しています論文中の試験配合設計などは、あくまでも参考に供するものです。したがって、現場でそのまま使用した場合の結果についての責任は、当協会、筆者、及び、論文執筆者や関係大学が負うものではないことを付け加えます。
余談ですが、飼料の混合攪拌効率を計るのに米国で一般的に最も多く使われているのは食塩です。食塩中のクロールはラボで分析できます。また、米国のクワンタブ・クロール・滴定器(Quantab Chloride Titrators, Environmental Test Systems, Elkhard, IN)でもできます。この滴定器は低レベル濃度では、0.005-0.1%までの幅で検体の塩化ナトリウムを%に読み替えられますが、分析には特殊なフィルター紙(Quantitative Q8, Pittsburgh, PA)などの併用も必要です。
本報告の内容は日本で捉えている一般的な養豚用自家配合飼料の範疇ではさほどに重要ではないかもしれません。然し、日本の養豚も色々な意味で経営規模や連携(ある種のインテグレーション)が大きくなるにしたがい、ナーサリー(授乳・離乳前後)子豚や育成前期の子豚の生産システムが確立するなかで問われる飼料の攪拌効率に関してが本報告です。それは、飼料会社の段階で関心がある場合もありますし、委託配合や大型の自家配合を行う養豚経営者(会社)にとっても関心がある内容かもしれません(瀨良、2007)。 |