アメリカ大豆協会

瀬良英介ニュースレター

瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2007年8月 (166)

マイコトキシンとフランス西部の乳牛群の原乳

牛乳中のマイコトキシンは公衆衛生面から懸念すべき問題で絶えず検査が必要な事柄です。フランスのサン・ゲネス・シャンパネルにある国立農業研究所では、草食動物疫学部門のブルドラ博士を含む4名の研究者が興味ある調査報告をしていますので、その一部を御紹介しましょう。

アフラトキシンM1とオクラトキシンAが酪農家の出荷用バルクタンクの原乳にどの程度あるかを調べたものです。調査は2003年ですがフランスの酪農中心部とも言われる北西部で4地域の酪農家を調べています。任意に選んだ132戸は特徴的にはコーンサイレージや農家で生産する穀類を主体に与えています。農家で生産されるコーンサイレージや穀類が往々にしてマイコトキシンに汚染されていると指摘されている給源です。

調査は年2回、冬と夏に行われました(132戸×2回=264件)。検体採集時期には訓練された調査員が現場の管理体制や生産動向についての具体的なアンケート質問を聞き取り書き込み調査をしました。アフラトキシンM1は264検体中3件見つかりましたがレベルはEUが法律で定めている限界規準である1リットル当り50ナノグラム(50ng/L)より低い1リットル当り26ナノグラムかそれ以下でした。極微量のアフラトキシンM1は6件ありましたが、それらは1リットル当り8ナノグラム以下でした。オクラトキシンAは3件検出されましたが、それらは1リットル当り5〜8ナノグラムでした。

酪農家でマイコトキシンが陽性という結果が出た農場の合計は微量のアフラトキシンM1を検出した3戸を含めた12戸ですが、マイコトキシン非検出農場に比べ飼料をTMRにして与えていた割合が高く58%対27%でした。更にマイコトキシン陽性の農場の乳生産量は低いという傾向がありました。

調査期間中に検体採集やアンケート質問の聞き取り調査をした農場の原乳中アフラトキシンM1とオクラトキシンAの汚染は低かったのですが、農場の生産と管理データからは飼料の調整方法や給与とマイコトキシン汚染との間に関連があることが示唆されました。

調査農場を選んだフランス北西部の4地域の132農場とはアクイタイン(34戸)、ブリタニー(33戸)、ポワトー・シャレンテ(32戸)、及び、ペイ・デ・ロワール(33戸)に在する酪農家ですが、フランスの主なとうもろこしと生乳生産地域です。農場はDHIA(乳検)データベースから選ばれていますが、選考基準はホルスタイン種であること、搾乳牛が20頭以上であること、そして、コーンサイレージが少なくとも総飼料乾物の50%を占めていることなどをあげています。下記に要点の一部を原文の表2より抜粋しました。

フランス西部の牛群の乳生産と管理要点の一部より(論文の表2より、注:瀬良)

 

項目

 

アフラトキヒンM1&オクラトキシンAがゼロ牛群

(n = 120)

マイコトキシン牛群

(n = 12)

農場総面積 (ha)

90.6(59.7)*

83.1(46.5)

とうもろこし作付け面積 (ha)

21.6(12.0)

24.1(18.8)

搾乳牛 (頭数)

48.7(19.7)

50.1(16.7)

乳量  (kg/頭)

7,982(1,481)

7,396(971)A

 

 

 

放牧 (月数/年)

4.4(3.5)

3.7(3.4)

コーン・サイレージ (月数/年)

11.6(0.9)

12.0(0.0)

大豆ミール  (月数/年)

5.7(5.8)

6.2(6.0)

農場生産穀類コンセントレート  (月数/年)

5.2(5.8)

4.5(6.0)

コマーシャル穀類コンセントレート  (月数/年)

0.9(3.0)

2.2(4.8)

 

 

 

コーン・サイレージ (%乾物)

34.6(10.2)

34.3(4.5)

コーン・サイレージ (給与日量)(DM kg/頭/日)

12.6(2.2)

13.1(1.9)

コーン・サイレージ(トレンチサイロ詰め)(%牛群数)

77.9

66.7

TMR (%牛群数)

25.0

58.3B

飼料品質管理レベル 

DHIA技術者による判断(%牛群数)

 

 

 

 

    大変に良い

    良い

    中程度

41.8

48.4

9.2

33.3

66.7

0

 

 

 

最低1箇所にカビが見られる粗飼料 (%牛群数)

44.3

58.3

沢山のカビが見られる粗飼料類  (%牛群数)

1.7

0

管理者は粗飼料のカビによく注意している(%牛群数)

58.3

41.7

マイコトキシンに誘発されたと思われる疾病 (過去5ヵ年)

2.5

0

注:(カッコ内数字)=上付け*=平均(標準偏差)
注:乳量数値の上付けA= P < 0.10
注:TMR数値の上付けB= P < 0.05

ヨーロッパでは飼料会社で製造する飼料はマイコトキシン、特に、アフラトキシンに関しては厳しくチェックされているので、市販の濃厚・配合飼料からアフラトキシンが見つかることは稀であることを指摘しています。しかしながら、アフラトキシンの主なリスクは、農場で生産されたコーンサイレージ類や粗飼料に存在しやすく、特に、酷い極暑にさらされたり、不適切な収穫や保存などによりアフラトキシン問題が増大することを指摘しています。本トピックスの詳細に興味のある方は米国酪農学会誌(J. Dairy Sci. 2007. 90:3197-3201)を参照なさることをお勧めします。

余談ですが、研究社は報告の中で2003年は記録的に暑い夏であったことを指摘し、極端な極暑ではイタリアのポーヴァレーで生産したとうもろこしなどからもアフラトキシンが検出されたことを指摘しています。また、地球の温暖化が進むにつれ、また、熱波が起きる回数や長さによっては、ヨーロッパや他の温帯地域でも牛乳中のアフラトキシン汚染が出るようになるであろうと忠告しています。恐らく、これは日本にも当てはまることであると思います。九州のみならず北海道の北東部などでもかなり頻繁に起きる熱波と極暑は、乳牛管理に暑熱対策が必要になってきていますが、特に、農場で生産するサイレージなどのカビに対しての対策は非常に重要であると思われます。

マイコトキシン(カビ毒)の中でもオクラトキシンAはかなりの部分がルーメン微生物により基本的には糞尿に排出される毒性の低い発がん性二次代謝物質になります。牛乳にも若干出ることがあります。ノールウェイ地方の報告では、オクラトキシンAの牛乳中のレベルが体重1kg当たりの許容量を越している場合もあるとしながらも、オクラトキシンAについての上限は定めていません。

アフラトキシンB1はルーメン微生物による分解が低く、吸収されたアフラトキシンB1は主に肝臓で代謝されてアフラトキシンM1になりますが、代謝されたアフラトキシンM1は元のアフラトキシンB1同様に毒性が高いのです。牛乳中にはアフラトキシンB1の通常は1〜2%、高泌乳牛などの場合では最大6%程度がアフラトキシンM1として排出されると報告されています。このような理由から、いくつかの国によっては牛乳・乳製品中のアフラトキシンM1の上限を定めていますが、ヨーロッパ連合はそのレベルが世界で最も低く牛乳1キロ当たり0.05マイクロ・グラム(0.05μg/kg)です(瀬良、2007)。

 
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