ブロイラーの脚の問題と高蛋白質飼料と全植物性飼料の影響
アウバン大学家禽学部(アラバマ州)のビルギリをはじめ計4名の研究者がブロイラーや七面鳥生産とブリーダー業界で一般的に問題だとされている脚の問題を飼料との関係で試験をした興味ある報告があります。脚の問題というのは俗に脚焼け(ただれ)、アンモニア焼け(ただれ)と呼ばれるもので脚の蹄が土や床と接触する部分に起きる接触性の皮膚炎で、ただれが酷くなると皮膚の厚みや浮腫、また、表面的な潰瘍の状態になります。この症状はブロイラー製品の品質にも影響しますし、動物愛護の観点からも問題であると指摘されています。
試験は1日令の初生雛1600羽を32ペンに任意に入れ、2×2×2法計画で蛋白質レベル(高、低)、蛋白質の給源(全植物性、植物性+動物性)、性別(雄、雌)を4ステージの給与プログラム(スターター、グローワー、フィニッシャー、休薬)の組み合わせで行っています(ペン当り50羽、雄雌それぞれ4ペンづつを各処置に振り分け)。
生体(飼育)成績に加え、試験に使われている全ての個体について脚のスコアを29日令、43日令、54日令に記録し、また、脚蹄裏のただれの具合を3段階、(無し、中程度=浮腫<1.5cm、酷い=浮腫>1.5cm)で分けています。屠殺処理後のサブサンプルは歩留まりの評価にも使用しています。鶏糞をペンごとに集め、それらを集合したサンプルは29日目、43日目、54日目の3回集め、全窒素とアンモニア態窒素(NH3-N)を調べています。
蛋白質レベルは14日令、29日令、43日令の生体重に有意に影響を与えました(p<0.05)。日令が43日令と54日令では、生体重は有意に蛋白質の給源と性別により影響を受けました。冷屠体の歩留まりは試験処理区の間で違いがありませんでした(p>0.05)。脚の蹄裏(特に土や床と接触する部分)の浮腫は蛋白質レベル、蛋白質の給源、性別によって有意に影響を受けました。全ての浮腫は29日令では軽かったのですが、蛋白質の給源により有意に起きかたに違いがありました(全植物性=31%:植物性+動物性=41%)。蛋白質レベルと蛋白質の給源双方とも54日令では脚蹄裏の浮腫が酷く起きかたも有意に多かった。脚の蹄の問題(pododermatitis)は雄鳥(61%)で雌鳥(55%)よりも高かった。鶏糞の全窒素分は有意に蛋白質レベルと蛋白質の給源により左右されました。鶏糞のアンモニア態窒素(NH3-N)含量は29日令を除いて有意ではありませんでしたが、それぞれの給与期間が進むにつれ増える傾向がありました。脚の蹄の問題と酷さは蛋白質レベル、蛋白質の給源、性別、及び、月令(週令)によって有意に影響を受けています。したがって、ブロイラーの脚の蹄の問題(pododermatitis)の発生原因には栄養の要因が大きいです。
試験の結果として論文の終わりに指摘されている5点は次のようなものです。
(1)ブロイラーの飼育成績は蛋白質レベル(高>低)と蛋白質の給源(植物性>植物性+動物性)により有意に影響を受けました。
(2)肉処理の歩留まりは(植物性+動物性>植物性)以外は、飼料や性別で影響を受けませんでした。
(3)脚蹄の浮腫は54日令で有意に蛋白質レベル(高>低)、蛋白質の給源(植物性>植物性+動物性)、及び、性別(雄>雌)に影響を受けました。
(4)脚蹄の酷い浮腫に影響を与えたものに、蛋白質レベル(高蛋白質では21%:低蛋白質では10%)、及び、性別(雄では21%:雌では10%)で2倍増え、蛋白質の給源(植物性で23%:植物性+動物性で8%)で3倍増えました。
(5)鶏糞の窒素とアンモニア態窒素(NH3-N)は蛋白質レベル(高>低)、及び、蛋白質の給源(植物性>植物性+動物性)により有意に影響を受けました。
試験飼料4種類の幾つかの栄養素レベルと脱皮大豆ミール、家禽副産物ミールの混入割合は次のようなものです。
スターター (0〜14日令)
|
高蛋白質 |
低蛋白質 |
|
植物性 |
植物性+動物性 |
植物性 |
植物性+動物性 |
脱皮大豆ミール
(CP48%)(%) |
39.3 |
26.5 |
34.0 |
21.2 |
家禽副産物ミール
(CP55%) (%) |
――― |
10.0 |
――― |
10.0 |
粗蛋白質(%) |
24.7 |
25.5 |
21.8 |
22.3 |
ME (kcal/kg) |
3096 |
3100 |
3093 |
3098 |
Ca (%) |
1.08 |
1.11 |
1.05 |
1.22 |
有効リン(%) |
0.52 |
0.47 |
0.48 |
0.48 |
リジン(%) |
1.38 |
1.38 |
1.2 |
1.2 |
メチオニン(%) |
0.56 |
0.54 |
0.55 |
0.53 |
メチオニン+シスチン(%) |
0.95 |
0.95 |
0.91 |
0.91 |
K (%) |
1.1 |
0.89 |
0.96 |
0.78 |
DL-メチオニン |
0.2 |
0.2 |
0.22 |
0.16 |
L-リジン |
0.04 |
0.2 |
――― |
0.16 |
グローワー (15〜29日令)
|
高蛋白質 |
低蛋白質 |
|
植物性 |
植物性+動物性 |
植物性 |
植物性+動物性 |
脱皮大豆ミール
(CP48%)(%)
|
34.4 |
21.1 |
29.2 |
15.9 |
家禽副産物ミール
(CP55%) (%) |
――― |
10.0 |
――― |
10.0 |
粗蛋白質(%) |
22.4 |
20.4 |
20.2 |
19.9 |
ME (kcal/kg) |
3117 |
3116 |
3117 |
3118 |
Ca (%) |
1.06 |
1.41 |
1.08 |
1.39 |
有効リン(%) |
0.5 |
0.51 |
0.52 |
0.5 |
リジン(%) |
1.18 |
1.18 |
1.07 |
1.07 |
メチオニン(%) |
0.55 |
0.57 |
0.53 |
0.55 |
メチオニン+シスチン(%) |
0.88 |
0.88 |
0.83 |
0.83 |
K (%) |
0.97 |
0.73 |
0.89 |
0.67 |
DL-メチオニン |
0.2 |
0.2 |
0.21 |
0.2 |
L-リジン |
――― |
0.15 |
0.04 |
0.2 |
フィニッシャー (30〜43日令)
|
高蛋白質 |
低蛋白質 |
|
植物性 |
植物性+動物性 |
植物性 |
植物性+動物性 |
脱皮大豆ミール
(CP48%)(%) |
28.0 |
18.7 |
23.6 |
14.5 |
家禽副産物ミール
(CP55%) (%) |
――― |
7.0 |
――― |
7.0 |
粗蛋白質(%) |
20.2 |
18.4 |
16.4 |
17.2 |
ME (kcal/kg) |
3149 |
3149 |
3151 |
3149 |
Ca (%) |
0.92 |
1.0 |
1.04 |
0.93 |
有効リン(%) |
0.47 |
0.47 |
0.47 |
0.4 |
リジン(%) |
1.0 |
1.0 |
0.92 |
0.92 |
メチオニン(%) |
0.57 |
0.58 |
0.52 |
0.53 |
メチオニン+シスチン(%) |
0.86 |
0.86 |
0.78 |
0.78 |
K (%) |
0.86 |
0.77 |
0.74 |
0.65 |
DL-メチオニン |
0.25 |
0.25 |
0.21 |
0.21 |
L-リジン |
――― |
0.11 |
0.05 |
0.15 |
休薬 (44〜54日令)
|
高蛋白質 |
低蛋白質 |
|
植物性 |
植物性+動物性 |
植物性 |
植物性+動物性 |
脱皮大豆ミール
(CP48%)(%) |
23.2 |
14.5 |
19.3 |
12.0 |
家禽副産物ミール
(CP55%) (%) |
――― |
6.5 |
――― |
6.5 |
粗蛋白質(%) |
19.6 |
17.4 |
18.6 |
16.6 |
ME (kcal/kg) |
3186 |
3186 |
3190 |
3189 |
Ca (%) |
0.7 |
0.94 |
0.76 |
1.01 |
有効リン(%) |
0.45 |
0.44 |
0.46 |
0.46 |
リジン(%) |
0.9 |
0.9 |
0.82 |
0.82 |
メチオニン(%) |
0.45 |
0.46 |
0.4 |
0.4 |
メチオニン+シスチン(%) |
0.75 |
0.75 |
0.68 |
0.68 |
K (%) |
0.86 |
0.69 |
0.81 |
0.6 |
DL-メチオニン |
0.16 |
0.16 |
0.13 |
0.13 |
L-リジン |
0.01 |
0.12 |
0.05 |
0.14 |
本報告は表6点、脚の蹄の写真を含む図6点からなる8ページの論文ですが興味深いディスカッションを含んでいます。詳細に興味のある方は米国の応用家禽研究ジャーナル(2007 J. Appl.Poul.Res. Vol.16, No.3,304-312)を参照されることをお勧めします。
余談ですが日本では考えられないほど高レベルの脱皮大豆ミールを単独で組み込んだ植物性蛋白質飼料を使った試験ですが、このレベルでは過剰なアミノ酸が入ってしまいますので俗にいう蛋白質過剰状態です。決して、大豆ミールとの組み合わせで良い原料ではありませんが、家禽副産物ミールを動物性蛋白質の給源として脱皮大豆ミールと合わせています。その組み合わせで脚蹄の浮腫に関して相当な改良が得られるのですから、やはり大豆ミールがもたらす良い成長と肉量増などを考えると脚の問題を解決しつつ脱皮大豆ミール、或いは、大豆ミールは相当量使えることがお判りになると思います。
研究者は大豆ミール中の利用がよくないオリゴ糖の部分が鶏糞を粘々で刺激性のあるものにし、水分の多い鶏糞になる点とそれが脚に付着して皮膚炎を起しやすくなることなどについても触れていますが、それなども興味のある指摘です(瀬良、2007)。 |