アメリカ大豆協会

瀬良英介ニュースレター

瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2008年1月 (175)

大豆サイレージは搾乳牛に充分使える

今年も畜産飼料と栄養や周辺に関するさまざまな報告を個人的見解も含めたトピックスとして載せたいと思います。日本の畜産飼料産業は様々な向かい風と追い風を受けていますが、トピックスが皆様の活動や理解の助けの一旦になればとの思いから執筆を続けます。

 マッギル大学(カナダ、ケベック州)の畜産、及び、作物学部の研究者グループ(E. Vargas-Belio-Perezを含めて計3名)は乳牛用粗飼料用として大豆サイレージを4番刈りアルファルファ・サイレージと比較し、大豆サイレージの相対的な価値を求める研究を報告しています。

 サイレージにする大豆は莢に充分実が入った状態で刈り取っています。比較試験には等窒素に調整した二種類の飼料を粗飼料:濃厚飼料比(48:52)で作っています。大豆サイレージとアルファルファ・サイレージがそれぞれの粗飼料の部分の72%を構成し、残りの部分にコーン・サイレージを混ぜています。試験には泌乳前期のホルスタイン種を20頭、スイッチバック法で使っています。飼料の処理を調べるために搾乳牛4頭はルーメン・カニューレ装着でルーメン内発酵のパラメーターを観察、また、インビボで全消化管の栄養素利用を観察するためです。

 アルファルファ・サイレージに比べ大豆サイレージには中性デタージェント繊維が15%多く、酸性デタージェント繊維が28%多く、粗蛋白質が25%多く入っていました。大豆サイレージ給与区とアルファルファ・サイレージ給与区では、大豆サイレージ給与区のほうが乾物の摂取が低く(23.5 kg/日:25.1 kg/日)、産乳量も低かった(35.5 kg/日;37.2 kg/日)のです。しかしながら、エネルギー補正産乳量と産乳効率で見るとどちらの区も似通っていました。

乳蛋白質(平均3.0%)、乳糖(平均4.7%)、及び、全固形濃度(平均12.6%)については飼料処理区による違いの影響を受けていませんでした。然し、大豆サイレージ区のほうがアルファルファ・サイレージ区に比べ、乳脂が高く(3.8%:3.6%)、乳汁ウレア態窒素濃度も高かった(15.6 mg/dL : 14.3 mg/dL)のです。

大豆サイレージ区のほうがアルファルファ・サイレージ区に比べルーメンpHは低く、ルーメンNH3−N は高かったのです。サイレージの種類による全消化管の消化率は、乾物、粗蛋白質、中性デタージェント繊維について影響を受けていませんでした。

 結論として、この試験の研究者グループは大豆サイレージをアルファルファ・サイレージと比べたとき、飼料摂取と産乳量には負の影響がありましたが、エネルギー補正乳量、産乳効率、全消化管の栄養素消化率は似通ってたと報告しています。

 北米に大豆が紹介された当初、大豆は粗飼料として利用されていました。1940年代始めごろまで、米国で作付けされた大豆の面積の半分以上は粗飼料用でした。

 この試験で使った大豆品種は(Kodiac種)で2005年5月末の週にケベック州のセント・アン・デ・ベルビューの試験農場で蒔き付けを行っています。種子の蒔き付け量は、ヘクタール当り70kg、キロ当たり7980粒、或いは、ヘクタール当り558,600粒でした。サイレージ用大豆の収穫は8月15日で莢には充分に実が入っており、大豆の茎の下葉が黄色に変わってきた時期でした。サイレージ用の四回刈りアルファルファは開花前期の段階で刈り取られています。全ての粗飼料は刈り取り後、乾物がほぼ30%になるまで余乾しています。

 報告中の表1の大豆サイレージの設計は、乾物で大豆サイレージが36%、アルファルファ・サイレージが0%、コーン・サイレージが12%です。また、アルファルファ・サイレージの設計は、乾物で大豆サイレージが0%、アルファルファ・サイレージが36%、コーン・サイレージが12%です。大豆サイレージの粗蛋白質は18.6%、産乳正味エネルギーはNEL 1.59 Mcal/kg、アルファルファ・サイレージの粗蛋白質質は19.0%、産乳正味エネルギーはNEL 1.64 Mcal/kgです。

 試験飼料代謝物がが糞中に出るのを測定するマーカーには酸化クロムを使っていますが、ジェラチン・カプセル入りで8gのCR2O3です。ルーメン内液体は(RT Rumen Fluid Collection Tube, Bar Diamond Inc., Parma, ID)を使い、ルーメンpHは(Accumet pH Meter / AB15 Plus, Fisher Scientific, Pittsuburgh, PA)を使っています。

 この7ページにわたる報告は表6点からなるものですが、詳細に興味のある方は米国酪農学会誌(J. Dairy Sci. 91:229-235)を参照なさることをお勧めします。

 余談ですが、冒頭でも触れていますように、米国では長い間、大豆の油分やミール部分を評価していませんでした。以前の拙稿でも触れましたが第一次世界大戦後あたりのイリノイ州農事試験場の報告でも大豆は粗飼料程度にしか使い道が無いとしていました。

 近年、背丈が高い粗飼料に向いている大豆品種も作られてきていますが、この報告にもあるように粗飼料としての大豆サイレージは評価できるものです。ただ、他の報告でも共通していますが、飼料摂取量と産乳量は下がります。それが評価できる理由にはエネルギー補正産乳量や産乳効率が部分です。粗飼料中の繊維率が下がる最大の要因はリグニンだと指摘されています。試験飼料では、大豆サイレージ中のリグニンが11.0% SD±0.7、アルファルファ・サイレージ中のリグニンが7.6 SD±0.5となっています。リグニンのことは研究者グループもディスカッションで指摘していることです。

研究者グループは、ディスカッションの中で(Oba and Allen, 1990 & 2000)の中性デタージェント繊維と乾物摂取量などにも触れています。大場氏は日本にも度々来日して講演しておられる在カナダの優秀な教育・研究者です。よく引用されるのは、大場氏とアーレン氏が提示した中性デタージェント繊維(NDF)を一単位上げることで、乾物摂取日量(DMI)が0.17kg増え、乳量が0.25kg増えるという点です。

 日本では食品大豆の一部を国産で賄っていますが、地域によっては、食品用以外に粗飼料用として大豆サイレージを考える可能性を否定できないと感じています。日本 の国土は確かに狭く火山灰土の土地が多いのです。然し、北海道、東北などでも野地のような土地を適切に利用すれば、牛の粗飼料の一部を代替させることができます。大豆はマメ科植物ですから、食品、或いは、油糧種子として高収量を追わなければ、相当に土壌が貧しい土地でも自然界の窒素を根に固定しながら生育します(瀬良、2008)。

 
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