アメリカ大豆協会

瀬良英介ニュースレター

瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2008年1月 (176)

牛乳中のCLAを増やすのに大豆油は充分使える

母校(アイオワ州立大)の畜産学部栄養生理研究グループ(D.C. Beitzを含む計4名)が大豆油やCLAサプリメントなどを搾乳牛に与えることで生乳中の乳肪酸組成に起きる反応を調べた興味ある最新の報告があります。

 簡単に内容を御紹介しましょう。ホルスタイン種産乳牛を36頭使い(12頭の初産牛、及び、24頭の経産牛)を同等条件のペアと泌乳期のステージで6処理区に分け、大豆油、CLA(カルシウム石鹸CLA、及び、フリーな形のCLA)、或いは両方を飼料に添加して与えたときの牛乳中に出るCLA含量の影響を評価するために行っています。試験飼料は4週間給与されましたが、次のような組み合わせです:(1)対照区、(2)対照区+5%大豆油、(3)対照区+1%フリーCLA、(4)対照区+1%カルシウム石鹸CLA、(5)対照区+1%フリーCLA+4%大豆油、(6)対照区+1%カルシウム石鹸CLA+4%大豆油。 
 
  ルーメン内揮発性脂肪酸濃度、血中脂肪酸濃度、産乳量、及び、乳組成分は、毎週、或いは、二週間ごとに測定しています。乾物摂取と産乳量は毎日測定しています。飼料に添加して与える大豆油、或いは、CLAは、産乳日量、乳蛋白質濃度(牛乳100g中g数)と乳蛋白質生産日量(1日当りkg数)、或いは、乳糖濃度(生乳100g中g数)と乳糖生産日量(1日当りkg数)に何ら影響を与えませんでした。不飽和脂肪酸を大豆油、フリーCLA、或いは、カルシウム石鹸CLAとして添加した場合、血中プラズマの総脂肪酸濃度(100mL中mg数)を増やし、乳脂肪濃度(生乳100g中g数)と乳脂肪生産日量(1日当りkg数)を減らし、ルーメン中揮発性脂肪酸濃度(L中mmol数、100mol中mol数)には何ら影響を与えませんでした。

 重量%での牛乳中CLAは1%フリーCLA添加で0.4%〜0.7%増え、大豆油添加で1.2%増え、1%フリーCLA+大豆油添加で1.3%増えました。カルシウム石鹸CLA添加、或いは、カルシウム石鹸CLA+大豆油添加の場合、牛乳中CLAはそれぞれ0.9%、及び、1.4%増えました。

 サマリーとして、大豆油を5%添加することはフリーCLA、カルシウム石鹸CLA、又は、1%CLA(フリーCLA、又は、カルシウム石鹸CLA)+4%大豆油添加の場合と同様に乳脂肪中のCLA濃度を増やすことに貢献しました。

 CLAをカルシウム石鹸CLAとして与えた場合、乳脂肪中のCLA濃度はフリーCLAとして与えた場合よりもCLA濃度が高くなりました。飼料添加として5%大豆油、又は、4%大豆油+1%CLA(フリーCLA、或いは、カルシウム石鹸CLA)として与えた場合、生乳中のCLA量は増えました。

 研究者グループは生乳中のCLAを増やすのにC18:2(リノール酸)が豊富な油分、或いは、リノール酸が豊富な油分とフリーCLA、又は、カルシウム石鹸CLAを組み合わせたときの効果を報告の最後の箇所で指摘していますが、追加して指摘している点は、大豆油を産乳牛に与えたほうがCLAサプリメントを与えるよりも生乳中のCLA含有量を増やすのにはより経済的であろうとしていることです。

 因みに対照区の飼料設計は、乾物でアルファルファ・ヘイレージが7.4%、コーン・サイレージが31.3%、アルファルファ乾草が9.6%、高水分ともろこしが24.2%、コーン・グルテン・フィードが13.0%、大豆ミールが11.0%、ビタミン・ミネラル・サプリメントが3.5%です。大豆油添加区の飼料設計は、乾物でアルファルファ・ヘイレージが7.0%、コーン・サイレージが29.8%、アルファルファ乾草が9.1%、高水分とうもろこしが23.0%、コーン・フルテン・フィードが12.3%、大豆ミールが10.5%、ビタミン・ミネラル・サプリメントが3.3%、大豆油が5%です。乾物は原物ベースが62.4%に対してです。

対照区の飼料設計は脂質が3%ですが、大豆油添加区の飼料設計は脂質が8%になっています。結果として乳量と乳蛋白質は極僅か下がっていることが報告の表から判りますが懸念することではないのかもしれません。

  本報告は表7点を含めて11ページからなる論文ですが、詳細に興味のある方は米国酪農学会誌(J. Dairy Sci. 91:260270)を参照なさることをお勧めします。

 余談ですが、研究者グループも報告内で指摘しているように、複合、又は、共役リノール酸と呼ばれる(CLA)は、現在ではCLAで通用する時代になってきました。それは、抗がん性、抗肥満性、免疫活性度の刺激など一般消費者に関心のある事柄が判ってきたからでもあります。脂肪酸のCLA自体はかなり昔から知られているものです。

 CLAはシス型9、トランス型11が主体ですが、それ以外にもトランス型10、シス型12など数多くあります。

 試験に使っているフリーCLAは、オイルですがCLAが重量比で67%入っている製品で、それを乾物ベースで1.67%添加することにより飼料中に1%CLAが入る計算になります。製品は、試験のために(Conlinco Inc., Detroit Lakes, MN)から提供されています。また、カルシウム石鹸CLAは、試験のために(Eiler Frederiksen of Bioproducts Inc., Las Vegas, NV)が調整して提供したものですが、CaOを18.09g、水を17.79g、CLA含有のオイルを100.4g 合わせたものですが、1.91%添加することで飼料中に1%CLAが入る計算になります。

CLAについては、数年前に酪農ジャーナルに3回連載した拙稿でも乳牛のルーメン内で起きるバイオ水素添加に絡めたCLA周辺と牛乳・乳製品の推定CLA量や抗がん性を書きましたが、最近では、食品産業、特に、牛乳、乳製品関係でその関係の関心が高まってきています。恐らく、今後、ますますマーケッティングの観点から関心が高まることは必至でしょう。母校の研究者グループによる発表は、油の半分がリノール酸である大豆油の利点も論文中に指摘しているので簡単に紹介しました(瀬良、2008)。

 
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