ブロイラー逐次給与の効果
逐次給与はセクエンシャル・フィーディングと呼ばれているもので、栄養価の異なる飼料を対照家畜・家禽に1日から数日に渡り循環的に交合に給与する方法のことを指しています。これは飼養動物の成績を落とすことなく飼料費を減らし、また、動物愛護の質を向上させることにつなげられればという観点から関心が持たれているものです。
最近では、フランス国ヌーザリーの国立農業研究所(インラ)や家禽研究所のブーヴァレルを含む5名がブロイラーの48時間逐次給与を蛋白質やエネルギー含量を変えて行った報告があります。極簡単に報告の一部を御紹介しましょう。
この研究の目的は飼料1kg中含量が2,800kcal/kgME (E-)と3,200kcal/kgME(E+)、及び、蛋白質が230g/kg(P+)と150g/kg(P-)の組み合わせが900羽の雄ブロイラー雛の飼料摂取日量と成長にどのような影響を与えるかを調べ、また、それらの結果が対照区の標準飼料(CP = 190g/kg、及び、3,000kcal/kgME)を与えられた区とどのように違うかを見るためのものです。
逐次給与は48時間サイクルで2期間/期間1=10~17日令、期間2=18~29日令)に渡って行われました。四つの処理は期間1と期間2で比較されました:(1)コンプリート飼料(C)、(2)飼料で粗蛋白質レベルを変えたもの(SP = P+の後に続けてP-)、(3)飼料でエネルギー・レベルを変えたもの(SE = E-の後に続けてE+)、(4)飼料で蛋白質とエネルギー・レベルを変えたもの(SEPA = P+E-の後に続けてP-E+)。5番目の処理では(SEPB)蛋白質とエネルギー・レベルを設計の注でも示したように期間2のみで変えています。全ての試験に使われたブロイラーは最後の段階(30~35日令)で同じ飼料(3,050kcal/kgME, 17.5%CP)を与えられています。同じく、全ての試験に使われたブロイラーは試験開始まで同じスターター飼料(2,900kcal/kgME, 21%CP)を与えられています。
逐次給与とコンプリート飼料での飼料摂取は似通っていました。然し、総飼料摂取の比率で比べるとブロイラーはそれぞれの期間で高エネルギー飼料(E+とE+P-)を過剰摂取し、P-のみという飼料を期間2で過剰摂取していました(P<0.01)。期間2では過剰摂取はSEPAのほうがSEPBよりも多かったのです(P<0.01)。
体重増加は期間1では全ての飼料について似通っていました。ブロイラー35日令で、SE区のブロイラーはSEPA区とSEPB区のブロイラーよりも体重が重かったのです(P<0.01)。飼料:増体比は期間1で全ての飼料について似通っていました。そして、飼料:増体比は期間2でSP区、SEPA区、SEPB区がC区とSE区に比べて増加しています(P<0.01)。
歩行能力、屠体組成、胸肉歩留まり、腹脂肪は飼料によって変わることはありませんでした。然し、胸肉pHの最終的な値はSP区では改善されていました。本報告の結果として、標準飼料区同様の成長と屠体成績が蛋白質とエネルギー含量を変えた飼料を使った48時間逐次給与で得られます。
試験飼料設計7種類より (ハンター色素値、プレミックス設計等は割愛)
|
SP |
SE |
SEP |
原料 |
C(標準) |
P+ |
P- |
E- |
E+ |
P+E- |
P-E+ |
玉蜀黍 |
20.12 |
31.00 |
30.54 |
20.58 |
45.23 |
12.35 |
50.44 |
小麦 |
50.00 |
24.78 |
50.00 |
50.00 |
20.96 |
50.00 |
27.61 |
大豆ミール |
18.39 |
31.48 |
12.05 |
24.78 |
17.87 |
27.06 |
9.00 |
コーングルテン |
4.73 |
5.00 |
1.48 |
0.18 |
7.00 |
6.00 |
5.00 |
菜種油 |
2.91 |
4.00 |
2.14 |
0.80 |
5.00 |
0.77 |
4.00 |
2リンカル |
1.34 |
1.46 |
1.37 |
1.32 |
1.54 |
1.29 |
1.54 |
炭カル |
1.24 |
1.07 |
1.27 |
1.21 |
1.12 |
1.21 |
1.19 |
LリジンHCL |
0.37 |
0.27 |
0.31 |
0.21 |
0.39 |
0.36 |
0.39 |
DLメチオニン |
0.14 |
0.21 |
0.09 |
0.17 |
0.11 |
0.21 |
0.05 |
トリプトファン |
0.01 |
0.27 |
0.31 |
0.21 |
0.39 |
0.36 |
0.39 |
プレミックス |
0.45 |
0.45 |
0.45 |
0.45 |
0.45 |
0.45 |
0.45 |
計算値 |
ME(kcal/kg) |
3,000 |
3,000 |
3,000 |
2,800 |
3,200 |
2,800 |
3,200 |
CP(分析%) |
19.5 |
23.40 |
15.60 |
19.60 |
19.40 |
23.40 |
15.70 |
油脂(分析%) |
5.1 |
6.3 |
4.5 |
2.9 |
7.6 |
3.0 |
6.8 |
ME:CP(kcal/CPg) |
15.4 |
12.8 |
19.2 |
14.3 |
16.5 |
12.0 |
20.4 |
リジン(%) |
1.07 |
1.29 |
0.84 |
1.07 |
1.07 |
1.29 |
0.84 |
TSAA(%) |
0.81 |
0.99 |
0.64 |
0.81 |
0.81 |
0.99 |
0.64 |
トレオニン(%) |
0.67 |
0.84 |
0.53 |
0.68 |
0.68 |
0.81 |
0.53 |
トリプトファン(%) |
0.20 |
0.25 |
0.16 |
0.22 |
0.20 |
0.25 |
0.16 |
カルシウム(%) |
0.95 |
0.95 |
0.95 |
0.95 |
0.95 |
0.95 |
0.95 |
有効リン |
0.37 |
0.37 |
0.37 |
0.37 |
0.37 |
0.37 |
0.37 |
注:SEPには2処理あり、SEPA (P+E-続けてP-E+) = 10-29日令、
SEPB (5番目の処理は期間2=18-29日令のみ蛋白質とエネルギーを交合に逐次給与)
上記の飼料設計は研究者によるものですが、左端の(C)が標準飼料です。フランスで行われた試験ですから、使用原料も米国のブロイラー産業が使うのとはやや異なりますが、大豆ミールは相応に入っています。小麦が設計の半分入っていますので、これはフランス地域の事情があります。大豆ミールの使用は若干少なめになっているのがこのフランスの研究用設計です。通常であれば、とうもろこしが設計の半分程度を占め、大豆ミールが3割から5割増しに入り、その分、添加しているLリジンHCLなどを省きます。尚、飼料設計などを紹介したときに毎回指摘していることですが、上記の飼料設計を現場でそのままお使いになった場合、成績などの結果については、研究者グループ、トピックス執筆者、及び、アメリカ大豆協会は一切の責任を負えないことを御了承ください。
本論文は表3点と図1点からなる8ページの報告ですが、詳細に関心のあるかたは米国家禽学会誌(2008 Poultry Science 87:196-203)を参照なさることをお勧めします。
余談ですが、日本でも名古屋大学の奥村先生の研究グループ(T. Muramatsu, K. Kita, I. Tasaki, J. Okumura)が家禽のエネルギーや蛋白質の摂取と体内回転や熱量増加を調べ、英国の家禽栄養学会誌や栄養学会誌に1987年から1993年にかけて発表しておられますが、欧米でも種々の逐次給与(セクエンシャル・フィーディング)についての関心は1970年代からありました。近年では、飼料コストの節減や動物愛護の質の向上などの観点から関心が強まってきています。
個人的な見解を述べれば、本報告にあるような逐次給与は、ブロイラーの経営規模やインテグレーションの内容、また、現場の飼料ビンや鶏舎の配置具合によっては難しいと思います。現場での飼料ビンを高蛋白質、低蛋白質、低エネルギー、高エネルギー、高蛋白質と低エネルギー、低蛋白質と高エネルギーなどに分けて交互に給与することは作業手順が非常に煩雑になり、間違いを起し易いものです。米国でも養豚や養鶏の現場で通常の飼料でも時折起きることですが、バルク飼料搬送トラックの運転手が間違って、中身が違う飼料ビンにニューマで送り込んでしまうケースがあります。ブロイラーの場合は、通常は、スターター、グローワー、フィニッシャー、休薬などの標準飼料に準じた飼料でブロイラーを飼養するのが一般的です(瀬良、2008)。
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