アメリカ大豆協会

瀬良英介ニュースレター

瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2008年3月 (180)

肥育豚群の大きさや床面積が成績に与える影響

カナダ・サスカッチワン大学とプレイリー養豚センターが豚群の大きさと床面積の広さなどが成績に与える影響を調べた興味ある報告があります。研究者は日本でも著名なゴンユーとストリートですので簡単に一部を御紹介しましょう。

  現代の養豚産業では豚舎ペン当り100頭から1000頭を飼う傾向が出てきていますが、ペン当り飼育グループの頭数が大きい場合、小さいグループ同様に豚の成績が良いかどうかの疑問がわいてきていますし、また、大きいグループの豚は与えられたスペースをより効率よく使うかどうかという疑問がわいてきています。

  本試験は小さいグループ(18頭)と大きいグループ(108頭)のサイズで1頭当り床面積が0.52m2(混雑状態)、及び、1頭当り床面積が0.78m2(混んでいない状態)で飼育したときの生産、健康、行動、及び、生理学的変化の影響について調べています。

  ゴンユーとストリートが使った頭数は全部で2304頭(PIC 母系C22、又は、C42、父系337)です。それぞれのブロックには4種の試験が2×2で組み込まれています。2ペンの小さいグループ(18頭グループで1頭当り床面積が混雑状態=0.52m2)、2ペンの小さいグループ(18頭グループで1頭当り床面積が混んでいない状態=0.78m2)、大きいグループ(108頭で1頭当り床面積が混雑状態=0.52m2)、大きいグループ(108頭で1頭当り床面積が混んでいない状態=0.78m2)です。

  試験開始前の豚の調整期間などを考慮すると、試験開始時の体重は平均で37.4kg±で、最終体重は約92kgから95kgです。試験飼料は栄養バランスをNRC1998に基づいたマッシュ形態飼料で、成長に合わせて3フェーズの飼料を与えています。

  試験実施区画は7週から8週間かけて行う8区画で、それぞれの区画には288頭が関与していました。試験開始時の1頭当り平均体重は37.4kg±0.26kgでした。全体的には、
平均増体日量は1.032kg/日(混雑状態)、及び、1.077kg(±0.015)kg/日(混んでいない状態)でした(p=0.018)。個体当り床面積の違いが顕著に現れたのは試験期間の最後の週でした。加えて、全体的な増体効率(G:F)も(混雑状態=0.52m2)の豚群について減りました(P=0.002)。

  (混雑状態=0.52m2)の豚群は(混んでいない状態=0.78m2)の豚群に比べ、8週間の試験期間中に飼料を摂取する時間が少なかった(p=0.003)のですが、平均飼料摂取日量(ADFI)は処理区の間での違いはありませんでした(p=0.34)。

  全体的な平均増体日量(ADG)は(大きいグループ=108頭)が1.035kg/日でしたが、(小さいグループ=18頭)は増体が1.073kg/日(±0.015;p=0.039)でした。平均増体日量(ADG)の違いが二つのグループ(大きいグループと小さいグループ)で最も顕著に現れたのは試験期間の最初の二週間でした。試験期間全体でみたとき、増体効率(G:F)には違いがあり、(大きいグループ=108頭)が(小さいグループ=18頭)に比べ効率がよくありませんでした(p=0.005)。

  試験期間の8週間を通して(大きいグループ=108頭)はびっこ(lameness)のスコアが良くなく(P=0.012)、脚のスコアも良くなかった(P=0.02)のですが、グループの大きさによる罹病度合い(morbidity)の違いはありませんでした(P=0.32)。(注、瀬良:研究者は論文中で試験全体の総死亡率は0.9%で、死亡率を処理区によって区別するためには死亡率があまりにも低すぎたことも指摘しています。)大きいグループ(108頭)では、姿勢・行動や飼料摂取のパターンに関して極僅かな変化であるが見受けられました。グループの大きさと1頭当り床面積のびっこについての相互関係(p=0.04)は、大きいグループ(108頭)の豚群でも床面積が限られている豚群(混雑状態=0.52m2)のほうがびっこになりやすいことが示されました。

  行動の変化の中でも例えば横になって休んでいる状態などは(大きいグループ=108頭)の豚群のほうがスペースを効率よく使っていることが示唆されますが、全体的な生産性や健康状態についての変化は大きいグループ(108頭)と小さいグループ(18頭)双方とも研究のために分けられている混雑状態にでは同じような影響を受けていることが示されています。

  平均増体日量(ADG)の破線解析(broken-line analysis)では(大きいグループ=108頭)と(小さいグループ=18頭)にいる豚群の1頭当り床面積が(混雑状態=0.52m2)と(混んでいない状態=0.78m2)の豚の反応に対しては何ら違いが無かったことが示されています。また、小さいグループにいる豚群よりも大きいグループにいる豚群のほうが1頭当り床面積の制限に適応するという証拠はほとんどありません。

  本報告は表3点、図3点(区分け10点)からなる10ページの論文です。詳細に興味のある方は米国畜産学会誌 (J.Anim.Sci. 2008. 86:982-991)を参照なさることをお勧めします。

   余談ですが、日本でも肥育豚舎(グロー・フィニッシュ)を大型化する傾向があります。また、大型化する中で1頭当りの床面積を狭くすることへの関心もあります。これらについては、過去においても欧州や北米で色々な研究が行われてきています。比較検討するのが非常に難しい分野ですので、今までの研究結果も多種多様です。ゴンユーとストリートの最新の研究では、大きいグループの豚舎(グロー・フィニッシュ)は一時期はよくないと考えられていましたが、そうでもないことが判ったとしています。最も、ここでは研究課題として取り上げられていませんが、豚舎を大きくしていく過程で生じる糞尿処理と近隣住民との兼ね合いは、案外、日本では小さくないのでしょう(瀬良、2008)。


 
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