瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2005年1月 (103)
Bt脱皮大豆ミールと対照区脱皮大豆ミールでは、ブロイラーの成績は同等
オランダ・ワゲニンゲンの畜産研究グループ(C.A. Kan)とミズーリ州セントルイスのモンサント社(G.F. Hartnell)は、脱皮大豆ミールをほぼ35%レベルで使い、害虫に抵抗性を持つCry1Ac蛋白質を組み込んだ大豆、及び、同様のノン・GMO大豆、或いは、参考に7種類のコマーシャルの大豆品種を計1080羽の1日令のブロイラー(ロス508)に41日間与えた試験を報告しています。
41日令での全9区の平均体重は2,435g、飼料効率は平均1.52でした。処理区と性別の間には有意な相互作用はなく、最終体重、飼料効率、屠体歩留まり、胸肉についても試験区とコマーシャル大豆から作られている大豆ミールを与えた区との間には有意さは(P ‹ 0.05)有りませんでした。結果として、試験区と対照区に35%レベルで使った大豆ミールは、ブロイラーに与えたとき栄養面から同等であると結論づけられると報告しています。
主たる対照区は、試験区で使用している品種のノンGMO原種(親)を使い、その他の対照区としてコマーシャルで使われている7種類のノンGMO種を参考に使っています。これらの大豆の遺伝子の確認検査にはPCRとELISAを使っています。
全ての飼料は第三制限アミノ酸までのアミノ酸(メチオニン、シスチン、リジン)レベルをほぼ同等にし、カルシウム、有効リン(オランダの飼料成分表、Centraal Veevoederbureau, 1998)、ナトリウムなどを原料の分析値から得ています。飼料のエネルギー(AME)もほぼ同等で、スターターが11.9 MJ/kg、フィニッシャーが12.4 MJ/kgでした。粗蛋白質は、区によって若干の違いがありますが、スターターが22%、フィニッシャーが21.5%前後に調整されています。
害虫からの被害を防ぐためにバイオテクノロジーがとうもろこし、綿などの改良に使われ、いくつかの国々ではコマーシャル化されていることは知られています。モンサント社は、最近では、バチラス・チューリンゲンシス(Bacilus thuringiensis = Bt)のCry1Ac遺伝子をある種の害虫被害を防ぐためにGMO大豆に組み込みました。
大豆ミールはブロイラー飼料の重要な蛋白質とアミノ酸給源ですが、ブロイラーの成長は非常に早いので、飼料中に予測しない栄養的な変化や非栄養的な要素があれば、いち早く成績や屠体の資質に影響が現れると考えられています。ハモンド(Hammond et al., 1996)やアウメイトラ(Aumaitre et al., 2002)は、それぞれGMO大豆ミールと従来の大豆ミールを使った試験や家畜成績のレビューを行っていますが、結果としてGMO植物は従来の植物と栄養的に同等だと考えられると報告しています。
Bt大豆ミール区のブロイラー初生雛の体重は43.2g、41日令の体重が2,435g、0日令から41日令までの飼料摂取量が3,731g、飼料効率が1.57です。屠体体重(42日目)は2,329g、胸肉歩留まりが20%、もも肉歩留まりが13.7%でした。冒頭で触れましたように、41日令での全9区の平均体重は2,435g、飼料効率は平均1.52でした。処理区と性別の間には有意な相互作用はなく、最終体重、飼料効率、屠体歩留まり、胸肉についても試験区とコマーシャル大豆から作られている大豆ミールを与えた区との間には有意さは(P ‹ 0.05)有りませんでした。結果として、試験区と対照区に35%レベルで使った大豆ミールは、ブロイラーに与えたとき栄養面で同等であると結論づけられると報告しています。
この報告の詳細に興味のある方は、米国家禽学会誌(2004 Poultry Science 83:2029-2038)を参照なさるとよいでしょう。
余談ですが、筆者が知る限り米国の飼料産業では、脱皮大豆ミール、大豆ミール、ソイハルなどの調達にあたりGMOとノンGMO原料を分けて調達することを通常は行っていませんし、搾油工業も行っていません。それは、米国の家畜栄養学者が、専門委員会や検討会での膨大な試験分析結果を詳細に評価した結果、酪農学会や家禽学会も網羅した米国畜産学会連合(FASS = Federation of Animal Science Societies)を通し、栄養学的な見地からそれらの区別の必要が無いことを共同で正式に発表しているからです。
温暖化は地球にではなく人心にこそと願う事の多い世の中ですが、2005年(平成17年)は、乙の酉年で60年に一度と云われている珍しい年です。恐らく、日米ともにチャレンジの多い年としてスタートすると思います。年頭にあたり新年の御祝詞を申し上げ、トピックスを読んで下さる皆様に感謝し、畜産飼料関連産業界の皆様のつつがない日々と御発展を願っています。この号も103回目からスタートしましたが、どうぞ本年も宜しくお願いいたします(瀬良、2005)。