瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2005年3月 (108)
(108)肥育豚後期のイソロイシン要求量はNRC(豚)の推奨価で良い
イリノイ大学畜産学部とアイオワ州エームスの米国国立農業研究所(養豚の糞尿と匂いの管理を研究する部門)の研究者たちが肥育豚後期(87から100kg)である必須アミノ酸の一つ、イソロイシンの要求について報告しています。
簡単な結論は次のようなものです。非常にリーン(赤肉)な肥育豚後期の真の可消化イソロイシン要求推定価は0.30%(factorial requirement estimate)であり、NRC(養豚栄養・小委員会)が出している数値は正確であると言えます。また、成長が早く非常にリーンな報告に使った供試豚(87kgから120kg)は1998年版NRCが出した去勢豚と雌豚の予測価0.89g/Mcal(factorial estimate)という報告と合致するものです。プラズマ・ウレア窒素(PUN)の結果から得られた結果では、肥育用雌豚後期のイソロイシンの要求量は肥育用去勢豚後期のそれよりも若干高いのではないかと示唆されるとを報告しています。更に、今後、性別による要求量の違いを調べる必要性と肥育後期の試験で得られたデータの変動を如何に除去するかという必要性も合わせて指摘しています。
試験は三種類行っていますが、目的は体重増加が最大になる真のイソロイシン消化率と、肥育豚後期(87から105kg)におけるプラズマ・ウレア窒素の最低レベルを決定することでした。試験1では、イソロイシン欠乏の基礎飼料をとうもろこしと乾燥赤血球で作っていますが、イソロイシンを添加すれば充分に有効な飼料です。この飼料の分析値はCP10.5%、イソロイシン0.25%、リジン0.63%、ME計算値が3,475kcal/kgでした。回腸末端カニューレ装着豚と盲腸切除済み雄鶏に基礎飼料を使って行った前回の消化試験では、真のイソロイシン消化率は88%でした。試験2は成長試験でしたが、結晶イソロイシンの添加を5段階に分けた真の可消化イソロイシン(0.25%から0.33%)は、飼料1から5区に分けて与えていますが、増体と飼料効率はイソロイシンの段階的増加につれ直線的な反応があり(P=それぞれ、0.003 及び、0.036)で、真の可消化イソロイシンの明らかな平坦部は0.31%でした。試験3では、5×5ラテン方格を反復し、去勢豚5頭(方格1)と若雌5頭(方格2)を使い四日間給与(5回)と真の可消化イソロイシンを5段階レベル(0.22から0.30%)で調べています。飼料摂取量の共分散値(covariate)を使ってプラズマ・ウレア窒素(PUN)の傾向を求めていますが、イソロイシンが段階的に増加するに従い、若雌ではPUNが(8.9、8.6、8.0、7.0、及び、5.5; P=0.004)、また、若雌と去勢豚を合わせると(9.5、9.2、9.2、8.5、及び、7.6; P=0.006)と直線的に下がりました。去勢豚のみのPUNの結果は(10.5、10.0、10.2、9.9、及び、9.7)でイソロイシンによる影響はありませんでした(P=0.417)。これらの結果により、この試験では、NRC小委員会(豚)が推奨した非常にリーン(赤肉の多い)な肥育豚後期(high lean and late finishing pigs)の真のイソロイシン推定要求量(factorial requirement estimate)は、前述のように0.30%が正確であると示唆されたと報告しています。
肥育豚後期の配合設計(原物中%)のイソロイシンが充足している対照区では、とうもろこしが80.702%、脱皮大豆ミールが15.042%、大豆油が2.000%、石灰石が0.703%、第二リンカルが0.942%、微量ミネラル塩が0.350%、ビタミン・プレミックスが0.200%、L−リジンHCLが0.06%ですが、対照区の組成分は、CPが12.93%、リジンが0.66%、イソロイシンが0.55%、MEが3,481kcal/kgでした。イソロイシン欠乏区の配合設計は、とうもろこしが90.479%、赤血球(AP301G, American Protein Corp., St. Louis, MO)が5.000%、大豆油が2.000%、石灰石が0.881%、第二リンカルが0.850%、微量ミネラル塩が0.350%、ビタミン・プレミックスが0.200%、L−トレオニンが0.061%、L−リジンHCLが0.046%、DLメチオニンが0.125%、L−トリプトファンが0.008%ですが、イソロイシン欠乏区の組成分は、CPが10.46%、リジンが0.63%、イソロイシンは試験内容によって変えており、MEが3,475kcal/kgでした。
肥育豚後期の基礎配合飼料に使っている微量ミネラル塩の設計は、配合飼料1kg中に供給する微量ミネラル塩類として: 鉄Fe, 90mg (FeSO4・H20);亜鉛 Zn, 100mg (ZnO); マンガンMn, 20mg (MnO); 銅Cu, 8mg (CuSO4・5H2O); ヨウ素I, 0.35mg (CaI2); セレンSe, 0.3mg (Na2SeO3); 食塩・塩化ナトリウムNaCl, 3gでした。
同じくビタミン・プレミックスの設計は、配合飼料1kg中に供給するビタミン量として: 酢酸レチニール, 2,273ug (6,608 IU ビタミン A);コレカルシフェロール, 17 ug (680 IU ビタミン D3); dl-α-トコフェリル酢酸, 88 mg (88 IU ビタミン E); メナジオン・ナトリウム・バイサルファイト・コンプレックス, 4.7mg;ナイアシン, 33 mg; d-Ca-パントテン酸, 24mg; リボフラビン, 8.7mg; ビタミン B12, 35 ug; 塩化コリン, 324 mg (コリンとして242 mg)。
この報告の詳細に興味のある方は米国畜産学会誌(J. Anim.Sci.2004.82:1334-1338)を御覧になることをお勧めします。
余談ですが、この報告の中にある設計でも判るように、とうもろこし・大豆ミールが主体の養豚飼料では、イソロイシンのレベルは充足しています。やはり、大豆ミール中のリジン同様に、イソロイシンも大豆ミールでは2.5%、脱皮大豆ミールでは2.6%(93%有効)、加熱全脂大豆では2.18%(Dale and Batal, フィードスタフス年鑑2005年原料表より)となっています。カノーラ粕のイソロイシンは大豆ミールのそれよりも低い1.51%(有効83%)、そして、とうもろこしは更に低い0.29%(有効88%)ですから、養豚のみならず養鶏飼料などでも、とうもろこし・大豆ミール主体の飼料では、イソロイシンの給源は大豆ミールです。このような数値は、ジョージア大学、イリノイ大学、パーデュー大学、NRC、日本標準飼料成分表(2001年版)等にも載っています。
アメリカ大豆協会が昨年の秋に出版した拙稿、「大豆ミールは今後とも日本の重要な蛋白質飼料原料」、副題として「アミノ酸組成・消化率、原料使用の背景などの考察と独白」には、前述の日本標準飼料成分表(2001年版)の蛋白質原料部分を引用しました。日本の標準飼料成分表は、原物中ではなく、乾物中と粗蛋白質中の%数値を載せています。因みに、協会刊行物の21−22ページでは、大豆は、乾物中が1.83%、粗蛋白質中が4.49%で、丸大豆の粗蛋白質は40.78%です。また、脱皮大豆粕(ミール)は、同じ順序で2.61%に4.64%で、粗蛋白質は56.21%、大豆粕(ミール)は、2.39%に4.58%で、粗蛋白質は52.21%です。協会の刊行物には載せていませんが、日本標準飼料成分表(2001年版)の原本では、とうもろこしのイソロイシンも他の外国の表同様に低く、乾物中が0.31%、粗蛋白質中割合では3.30%でとうもろこしの粗蛋白質は9.25%です。
冒頭にも触れましたが、これらの数値から見てもとうもろこしと大豆ミールが主体になっている飼料では、大豆ミールが必須アミノ酸のリジンの大きな給源であるように、イソロイシンも飼料中の最も大きい給源が大豆ミールです。日本も米国にやや準じて豚や鶏の飼料設計に大豆ミールが栄養素経済単位当り、また、嗜好性の点からも多く使われる場合が多いのです。これらのコメントは栄養・飼料技術者や専門家には不要ですが、こういうことにはほとんど縁のない飼料・畜産セールス・プロパーや原料調達関係者、現場の担当者、農学関係の学生なども読んでおられるので付記しました(瀬良、2005)。