瀬良英介の一般業界向け

飼料・畜産トピックス

2005年9月 (120)

ブロイラー飼料の処理形態が成長と肉歩留りに与える影響

ミシシッピー州の州立大学家禽学部、デルタ研究エクステンション・センター、米国農務省南中部家禽研究センターの研究者グループ(M.T. Kiddら計6名)が、ブロイラー飼料を製造するときの一般的な処理形態であるマッシュ、ペレット・クランブル、エクストルード・クランブルの三種類について成長や肉歩留まりを調べました。


結論を簡単に指摘すると次のようなことです。エクストルード処理飼料を与えたブロイラーの結果には統一性がありませんでしたが、それでもエクストルード処理と従来からのスチーム・ペレット処理をした飼料を与えたブロイラーでは、マッシュ形態の飼料を与えられていたブロイラーよりも体重や屠体重が改善されていました。


現代のコマーシャル・ブロイラーの生産では、遺伝的形質として絶えず求められることが早い成長とより多い胸肉の蓄積です。一般的に想定されていることは、飼料の栄養密度を上げることにより、高められた遺伝的な生産形質を充分に引き出し、結果として市場出荷への日数も減らすということです。飼料の栄養利用を増加させるという観点からは、飼料を製造する処理方法や粒度(パーティクル・サイズ)などもブロイラーの飼料摂取や栄養利用に影響を与えると云われています。この研究者グループは、飼料製造処理の方法がブロイラーの成長に与える影響を二種類の試験で調べています。


コブ・500種の雄を試験1では1200羽(1日令)使い、それを24のフロア・ペン(ペン当り50羽)で飼い、試験2では2430羽を54のフロア・ペン(ペン当り45羽)で飼っています。試験1では1日令から17日令まで、試験2では42日令まで飼っています。飼料処理方法としては、マッシュ、エクストルード・クランブル、或いは、エクストルード・ペレットというものです。



エクストルード処理がブロイラーの成績に与える影響の表の一部

 

 

増体 (Kg/羽)

 

飼料効率 (Kg/Kg)

試験1 1日令〜17日令

マッシュ

0.432C

1.533A

ペレット・クランブル

0.474B

1.504AB

エクストルード・クランブル

0.515A

1.474B

    

    

    

試験2 1日令〜18日令

マッシュ

0.573B

1.287

ペレット・クランブル

0.617A

1.261

エクストルード・クランブル

0.629A

1.297

    

    

    

試験2 1日令〜35日令

マッシュ

1.834B

1.570B

ペレット・クランブル

2.054A

1.533A

エクストルード・クランブル

2.048A

1.566B

    

    

    

試験2 1日令〜42日令

マッシュ

2.492B

1.673

ペレット・クランブル

2.725A

1.693

エクストルード・クランブル

2.769A

1.676

肩文字が同じでないものは(P<0.05)


試験2の屠体重、腹脂肪、胸肉などの重量や歩留まりについての表は割愛しますが、冒頭の結論のように屠体重や胸肉の重量についてはペレット・クランブルとエクストルード・クランブルの間には差が無く(P<0.05)、マッシュより優れていました。


試験飼料の4種類については、部分的に下記に示します。



4試験用飼料配合設計

    
                                         試験1 試験2
原料 飼料中% 1-17 日令 1-18 日令 19-35 日令 36-42 日令
                        
とうもろこし 54.97 55.24 62.13 64.09
大豆ミール 36.55 36.71 30.35 28.98
鶏脂 4.35 4.21 3.65 3.57
2リンカル 1.76 1.70 1.64 1.43
炭カル 1.32 1.04 1.06 0.93
食塩 0.46 0.49 0.51 0.54
プレミックス 0.25 0.25 0.25 0.25
DLメチオニン 0.25 0.24 0.27 0.22
BMD・50 0.03 0.05 0.05 -
サコックス・60 0.03 0.05 0.04 -
LリジンHCL 0.03 0.03 0.05
                        
栄養組成
ME kcal/kg 3.125 3.125 3.150 3.175
CP% 22.40 22.50 20.00 19.50
総含硫アミノ酸(TSAA) % 0.95 0.95 0.91 0.85
リジン% 1.25 1.25 1.10 1.02
トレオニン% 0.84 0.85 0.75 0.73
イソロイシン% 0.93 0.94 0.82 0.80
ナトリウム% 0.20 0.21 0.22 0.23
カルシウム% 1.00 0.88 0.86 0.76
有効リン 0.45 0.44 0.42 0.38

*プレミックスの設計は次のようなものですが、飼料1kg中に供給される量です:ビタミンAが7,716 IU、コレカルシフェロールが2,205 IU、ビタミンEが9.9 IU、メナジオンが0.9 mg1、ビタミンB12が11 μg、コリンが379 mg、リボフラビンが5.0 mg、ナイアシンが33 mg、Dビオチンが0.05 mg、ピリドキシンが0.9 mg、Dパントテン酸が9 mg、チアミンが1 mg、エトキシキンが28 mg、マンガンが55 mg、亜鉛が50 mg、鉄が28 mg、銅が4 mg、ヨウ素が1 mg、セレンが0.1 mg。


*BMD・50が0.03%、及び、0.05%レベルで、飼料1トン(米トン)中、それぞれ25g、及び、50gのバシトラシンを供給している。


*サコックス・60が0.03%、0.04%、及び、0.05%レベルで、飼料1トン(米トン)中、それぞれ40g、50g、60gのサリノマイシン・ナトリウムを供給している。


この報告は、コマーシャル・ブロイラーを生産している関連農場や会社では、興味のあるものでしょう。マッシュの場合、出荷体重や処理後の屠体成績が若干ペレット・クランブルやエクストルード・クランブルより下がっています。この報告の詳細に興味のある方は、米国家禽学会のジャーナルの一つである(2005 J. Appl. Poult. Res. 14:536-541)を参照なさることをお勧めします。


尚、米国のブロイラー生産は、コマーシャル段階やこのような試験段階でも、飼料設計に使う蛋白質給源は、植物性蛋白質の大豆ミール(大豆粕)が中心です。また、各フェーズにおいてもかなり高いレベルで大豆ミールを使っているのに気がつかれると思います。


お陰様でこのトピックスで丁度120号になります。 多方面の方々が、このコーナーにアクセスして下さり、現場でのヒントなどに使ってくださっていることに感謝しています。また、過去数年前のトピックスなどについて、最近、検索をなさり、追加の質問や要望を下さったり、判らなかったことが初めてよく判ったというような連絡を頂くことがありますが、それはとても嬉しいものです。協会からは、早期引退して足掛け10年、来年は古稀を迎えますが、健康と頭脳が許す限り、また、家内の病気の「寛解」と体調が維持されている限り、今しばらくはトピックス等の執筆などを無理のない範囲で続ける積もりです。協会の事務所には、年に数回しか立ち寄っていませんが、幸いに必要な技術や産業情報の入手、或いは、国外の友人や関係者との意見のやり取りは全て個人ベースで行っているので、楽しく「生涯勉強」ができます。


10月から協会は新穀物年度になりますが、このコーナーは継続いたします。引き続き、若干なりともお役に立つことが出来るのは望外の喜びです(瀬良、2005)。