瀬良英介の一般業界向け

飼料・畜産トピックス

2005年11月 (124)

日本うずらへのL・カルニチン給与の効果

トルコのガジオスマンパサ大学とアンカラ大学の三人の研究者(S. Sarica, M. Corduk, 及び、K. Kilinc)は、日本うずらを使ってL・カルニチン添加が成長成績、屠体形質、可食用うずら肉の組成などに与える影響を調べた興味ある報告をしています。結果を簡単に述べますと、カルニチンの添加をしてもこの試験では一切の影響が無かったということです。

 

  この研究は、L・カルニチンを異なるレベルで日本うずら飼料に補足添加し、前述の成長成績、屠体形質、可食うずら肉の組成に与える影響を調べるためのものでした。日本うずらの初生雛(1日令)を168羽使い、同じ基礎飼料にL・カルニチンを飼料1kg当り0mg(対照区)、30mg、40mg、そして50mg添加して与えています。日本うずらへの異なるL・カルニチン添加は、増体(g)、累積飼料摂取量(g)、及び、飼料効率(g/g)に影響がありませんでした。日本うずらへL・カルニチンを0日令から35日令与えても暖屠体と冷屠体の歩留まり、及び、心臓、肝臓、砂嚢(さのう=すなぎも)と腹脂肪の相対価値に影響を与えませんでした。飼料へのL・カルニチン添加は日本うずらの総可食用うずら肉の乾物、水分、粗蛋白質、或いは、エーテル抽出物にも影響を与えませんでした。

 

  試験方法や結果の詳細は割愛しますが、対照区と全ての試験区に使われた基礎飼料の配合設計を紹介しておきましょう。ビタミンとミネラル・プレミックスの設計は割愛します。

 

日本うずら(食用)の基礎飼料設計と計算分析値など

 

 

スターター・グローワー

(0〜35日)

原料名

(%)

とうもろこし

56.68

大豆ミール

34.50

魚粉

5.54

植物油

0.62

食塩

0.25

石灰石

0.71

第二リンカル(2カルシウム燐酸)

1.28

dl−メチオニン

0.07

ビタミン・プレミックス

0.25

微量ミネラル・プレミックス

0.10

 

 

計算分析値

 

代謝エネルギー(ME kcal/kg)

2,901

粗蛋白質 (%)

24

カルシウム(%)

0.80

有効リン(Available P %)

0.30

メチオニン (%)

0.50

メチオニン+シスチン(%)

0.80

リジン (%)

1.39

アルギニン (%)

1.27

トリプトファン (%)

0.34

 

 

研究者は、L・カルニチンが日本うずらに与える特定の役割については更なる研究が必要であることを指摘しつつも、この研究に使われた配合設計には、カルニチンを若干含んでいるであろう魚粉が使われていることを指摘しています。恐らく、植物性原料のみの配合設計に使った場合やリジンとメチオニンが欠乏しているような飼料の場合は、L・カルニチンの効果が出るであろうことも指摘しています。この研究報告は7ページに及ぶものですので、結果の詳細について興味のある方は、米国家禽学会の応用研究学会誌である(2005 J. Appl. Poult. Res. 14:709-715)を御覧になることをお勧めします。

 

余談ですが、カルニチンはリジンとメチオニンの前駆物質で、水溶性の4値アミンです。植物の中には存在しないと言ったほうがよいですが、動物や微生物に存在します。人の肝臓でも生合成される物質です(L・カルニチン=βヒドロキシ・γトリメチルアミノビュチレート)。ミトコンドリアの壁を通して長鎖脂肪酸の搬入を容易にし、短鎖や中鎖脂肪酸を搬出するのに役立つと云われています。

 

この報告で面白いのは、うずらの卵について調べていないことです。恐らく、トルコでは、うずらの肉は食べてもうずらの卵は日本人のように食べないのでしょう。従って、卵の形質や産卵成績を調べていないのでしょう。今後の研究では、その点も調べるのかもしれませんが。逆に、日本では、うずらの肉を食べることをもう少し考え、卵以外に、肉を食べることをマーケッティングの面からも啓蒙するとよいのではないでしょうか。うずらの肉は、焼き鳥だけではなく、色々な調理に馴染みやすく、味付け如何によっては、中々美味しい肉です。魚粉の配合設計が高すぎるときは、肉も卵も少々魚臭くなる場合がありますが、うずらの飼育には、通常、大豆ミールなど植物性原料が主な蛋白質原料として使われています(瀬良、2005)。