瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2005年12月 (125)
アルファルファと大豆ミールの収穫逓減法則周辺の考え方
乳牛を飼養するときに、通常の条件下で最も重要な原料は良質な粗飼料であることは周知のことです。また、粗飼料の中でも好まれる粗飼料として挙げられるのが第一にアルファルファ(ルーサン)、第二にペレニアル・ライやオーチャードのようなイネ科牧草であると言ってもそう間違ってはいないでしょう。ここでは、素晴らしい嗜好性と消化性を持った大豆の皮(ソイハル)については、過去にも何度か紹介いたしましたので割愛します。
米国、カナダ、日本、ヨーロッパの一部の国々の酪農家に、「出来れば与えたい粗飼料は何ですか」と問えば、「アルファルファ」という答えが概ね戻ってきます。良質なアルファルファというのは、マメ科植物の牧草としては、嗜好性、消化性、栄養組成の点などで他の多くの粗飼料の追従を許さないほど優れていると言っても過言ではありません。
更に、アルファルファのようなマメ科植物を酪農家が生産する場合、そのアルファルファの根には空気中の窒素を固定して窒素肥料を作る根粒菌がいますし、根が非常に深いところまで伸びて生えますので、旱魃に強く、土壌改善をもたらす多年生マメ科植物としても知られています。どちらかと言えば、水はけが悪く酸性の強い土壌では、石灰や堆肥散布などで土壌酸性調整を併用しないと自生繁茂をさせるのには難しさが残ります。
酪農家がアルファルファを求めるときに若干気になる点はあります。それは、アルファルファを買うときの傾向として、蛋白質の含有割合の高さを追いすぎるのではないかという点です。個人的な見解ですが、アルファルファに第一に求めるものは、蛋白質ではなく良質な粗飼料としての繊維の部分と粗飼料としての機能性の部分だと指摘したいと思います。その後に、蛋白質、カルシウム、ビタミンA(ベータ・カロチン)などの組成分が挙げられます。良質な粗飼料ということであれば、繊維の消化性も相応に高いですから、嗜好性は高いものです。
アルファルファの品質を問うとき、米国の酪農経営者は良すぎるアルファルファを追い求めすぎているのではないか、という指摘をしている専門家が米国にも何人か居られます。その中にはカリフォルニア大学(デイヴィス校)のパトナム教授も居られます。これは、大変に面白く重要な指摘であると思います。低繊維を追い求めれば、高蛋白質になり灰分などが持つ価値を全体の栄養価の中で過小評価することにもなる点などを指摘しておられます。
酪農家の側から見れば、飼料原料の良し悪しは乳量と嗜好性で決める傾向があります。それ自体、間違ってはいません。確かに多くの酪農家が現場で肌で感じて知っていることは、高品質のアルファルファを充分に与えれば、通常は乳量が増えますので、最高品質のアルファルファを買値を度外視しても欲しがるものです。この傾向はいずれの国の酪農家にもあるようです。
米国のように成牛が1万頭前後の超大型の酪農経営者が存在する国では、酪農経営者はブロイラーのインテグレーションや超大型養豚の経営が取り入れているのと同じような飼料設計や緻密なLP計算かそれに準じる方法を受け入れて、コンサルに計算せていますから、アルファルファの収穫逓減の法則が周辺の原料事情で絶えず変わっていることも知っています。
然し、多くの米国の酪農家(経営者)は、実際の経営規模と飼料会社などとの関係から考えても、現場でそこまで緻密な計算を徹底的に追い求めて計算させる経済効果が無い場合が多いでしょう。同じことは、多くの日本の酪農家(経営者)にも当てはまるでしょう。ただ、その酪農家の方たちは、アルファルファの良さについては個人差があるにせよ、乳牛に取って間違いなく良い原料であると思っています。その個人差が行き過ぎると、価格が幾らでも構わないから最高のアルファルファを求めたいという考えになり、調達供給する側も顧客の無理を聞き届けるために苦労します。そういう需給関係の中では、残念ながら、蛋白質が1%上がるごとに価格が異常に高くなっている場合もあります。どれだけ高くても買いたいという意思表示はその個人の満足度との関係ですから、他人がとやかく言うことではありません。然し、大変に勿体無いときもあるでしょう。そのような贅沢が許されるとすれば、その酪農家の経営にはかなりのゆとりがあり、そこまで厳しい経営環境になっていないということの証でもあります。何処を詰めるかは、その経営者の価値判断に委ねられるときが多いものです。
日本においても基本的には、価格の設定は需要と供給の関係で成り立っています。年によっては、現地調達が不可能に近い最高品質のアルファルファであっても、需要する側の中に価格を度外視しても買うという意思表示があれば、当然、全体の原料の中での栄養素単位当りの価格を相対的に判断する適切な基準からは外れます。その判断には、酪農家の自己資本力と負債の関係も絡んできます。
アルファルファに求められるものの中で重要な要素は、中性デタージェント繊維というか消化性の良い、しかも反芻機能性を持った良質な繊維、ついで、蛋白質やミネラルやビタミンAなどの部分であるとするならば、蛋白質のレベルはほどほどの高さでも品質の良いアルファルファを生産したり市場で入手したりするのは、通常はそう難しいことではありません。難しくなったときは、そのような性質を持った他の妥当な原料を探せばよいのです。この当りが、米国や日本でもそうですが、適切と思われる価格の中で調達して使うアルファルファなど乾草に合わせて、大豆ミールやとうもろこしなどの原料を適量与え、乳牛の高産乳を維持しているのです。
米国の乳牛栄養の専門家に高品質のアルファルファとはどういうものかと聞けば、色々な答えが返ってきます。厳しい人であれば、乾物中、TDNで60%程度以上、ADFで30%程度以下、或いは、NDFで40%程度以下、あまり使わなくなりましたが粗繊維で24%程度以下などの数字のいくつかを指摘する人たちは少なくないでしょう。然し、年によって、また、市場の調達性全体を考える栄養専門家の多くは、良い品質の粗飼料として、乾物中、TDNで56%程度以上、ADFで38%程度以下、或いは、NDFで50%程度以下、あまり使わなくなりましたが粗繊維で30%程度以下などの数字のいくつかを組み合わせて指摘する人たちは決して少なくないでしょう。高い数値と低い数値のどちらを使うほうがより妥当性があるのかは、その年の収穫状況や在庫状況などの供給状態によっても変わり、更にそのときの粗飼料に対する需要の条件によっても変わるのものです。粗飼料生産地現場では、地域の酪農経営者や調達者が、その年の諸条件を考え、早めに「青田買い」で手付け契約をしていることも多いので、「最高品質=最高蛋白質含有量」という固定観念で原料を探す人にとっては非常に難しくなります。個人的な見方としては、蛋白質やADFの数値が1%上下するだけでアルファルファの価格が跳ね上がり始める点というのは要注意であると思っています。似たような考え方は、他の原料にも当てはまります(瀬良、2005)。