瀬良英介の一般業界向け

飼料・畜産トピックス

2006年1月 (127)

早期離乳子豚に低蛋白質・アミノ酸添加飼料を与える時の考慮点

カナダのマニトバ大学畜産部と食品部の研究者グループ(C.M. Nyachoti, ら)は、ドイツのデグーサ・ウルスAGの研究基金協力を得て低蛋白質・アミノ酸添加飼料が子豚の成績、内臓の発達、下痢の程度、腸管内微生物の数や発酵を3週間の試験期間で調べています。

 

コッツワォルド種の供試子豚は7日の慣らし期間の後、96頭 (試験開始体重がほぼ6.2 kg)を使い、興味深く有意義な報告をしています。膨大な報告のごく一部ですが、結論の一部をご紹介すると次のようなことです。

 

飼料は4種類ですが、とうもろこし・小麦、デハル大豆ミール主体の飼料は、フェーズI用のCP23%の対照区用飼料、同じ原料で試験飼料を作りながら粗蛋白質は、CP21%、CP19%、或いは、CP17%に順次落としたものを使っています。蛋白質を落とすに従い、クリスタル・アミノ酸を添加し、小腸でのリジン(Lys)、メチオニン(Met)に加えてシスチン(Cys)、トレオニン(Thr)とトリプトファン(Trp)の可消化レベルが4種類のマッシュ飼料の栄養素レベルについてほぼ同等になるように作られています。飼料は自由摂取で与えられています。

 

平均飼料摂取日量(ADFI)、平均日量増体(ADG)と飼料効率(G:F)は飼料の粗蛋白質をCP21%に下げても影響を受けていませんでした(P>0.10)。しかし、3週間の試験期間中、飼料中の粗蛋白質を更にCP19%、或いは、CP17% に下げると平均飼料摂取日量(ADFI)が下がり(P<0.001)、平均日量増体(ADG)も線形的 (linear) に下がり(P<0.001)、2次的 (quadratic) に下がりました(P<0.05)。飼料中粗蛋白質をCP19% に下げても飼料効率(G:F)に影響はありませんでしたが(P>0.10)、然し、この反応基準は、3週間の試験期間中の飼料中粗蛋白質が下がるにつれ線形的に下がりました (P<0.001)。血漿ウレア窒素は粗蛋白質の減少につれ線形的に下がりました(P<0.01)。飼料中粗蛋白質をCP23% からCP17% に下げると胃と肝臓の重量それぞれに線形的な影響と3次的 (cubic) な影響がありました(P<0.05)。飼料によっては柱状的データ (histological) に若干の違いがありましたが、明らかな傾向は見られませんでした。飼料中の粗蛋白質が下がるにつれ、回腸での消化物内の窒素は線形的に下がりました(P<0.01)。子豚の回腸内での消化物の揮発性脂肪酸(VFA)は、低蛋白質飼料を与えた区のほうが対照区のそれに比べ、ヴァレリン酸を除けば、概ね低かったです(P<0.05)。飼料と腸管内微生物には影響がありませんでした(P>0.10)。

 

種々の結果から見ると、飼料中の粗蛋白質をCP23% から4%単位かそれ以上に下げると子豚の成績に悪影響(may suffer)がでます。また、低蛋白質飼料は、微生物の有毒な代謝物でもあるアンモニアのようなものを下げることで、子豚の腸管内の健康状態を良好に保つことに役立つという仮説を支持しています。

 

表1 原文の試験飼料配合設計(原物中)より抽出(瀬良)

飼料中CP %

 

23

21

19

17

原料%

 

 

 

 

とうもろこし

24.59

28.48

32.51

36.53

小麦

20.00

22.00

24.00

26.00

デハル大豆ミール(CP48%)

20.66

15.28

9.70

4.13

大豆油

4.18

3.57

2.88

2.20

第二リンカル

0.27

0.45

0.62

0.80

石灰石

0.65

0.65

0.64

0.64

スプレー乾燥動物性血漿

3.00

3.00

3.00

3.00

魚粉

5.00

4.50

4.00

3.50

ホエー粉

20.00

20.00

20.00

20.00

残りはプレミックス、

アミノ酸添加物類、

 

それぞれの数値は割愛(瀬良)

計算分析値より抽出(瀬良)

 

 

 

 

ME, MJ/kg

14.8

14.7

14.6

14.4

CP %

23.0

21.0

19.0

17.0

Lys %

1.55

1.54

1.52

1.50

Ile %

0.93

0.83

0.81

0.80

Leu %

1.82

1.66

1.49

1.32

Met %

0.53

0.55

0.57

0.59

Thr %

1.03

1.02

1.01

0.99

Trp %

0.29

0.29

0.28

0.28

Ca%

0.80

0.80

0.80

0.80

総P %

0.65

0.65

0.65

0.65

 

表2 早期離乳子豚に低蛋白質・アミノ酸添加飼料を21日与えた成績1(原文では表4、瀬良)

飼料中CP %

 

23

21

19

17

SEM2

開始体重   kg

6.1

6.3

6.2

6.3

0.2

最終体重   kg3.4

13.5

13.4

12.3

11.0

0.3

平均日量(ADG)g/日

 

 

 

 

 

日令 0〜73

218

197

184

146

14.2

日令 7〜143

432

418

327

264

21.4

日令 14〜213、4

393

407

363

293

20.2

日令 0〜213、4

353

340

288

232

11.2

平均飼料摂取日量

   (ADFI)g/日

 

 

 

 

 

日令 0〜7 

292

299

281

247

16.3

日令 7〜143

561

547

462

416

20.8

日令 14〜213

608

599

544

485

26.4

日令 0〜213

528

522

464

414

18.0

増体効率 増体:飼料比

G:F比

 

 

 

 

 

日令 0〜73

0.74

0.66

0.67

0.60

0.05

日令 7〜143

0.77

0.76

0.71

0.64

0.03

日令 14〜213

0.65

0.68

0.67

0.60

0.03

日令 0〜213

0.67

0.65

0.62

0.56

0.02

その他の項目

 

 

 

 

 

水分摂取  L/日

3.83

3.01

3.24

3.22

0.49

ボディー・スコア5

2.75

2.79

2.75

2.67

0.71

糞スコア6

0.36

0.20

0.18

0.29

0.13

1:数値は各飼料について6回観察の平均

2:SEMはプール計算

3:線形的結果(P<0.001)

4:二次的結果(P<0.05)

5:ボディ・スコア: 1=悪い、2=良い 3=より良い

6:糞スコア: 0=正常、1=軟便、2=軽い下痢、3=酷い下痢

  

  研究者グループは、試験飼料を作るに当り、CP19% 及び、CP17% 飼料では、回腸内容物がCP21% 飼料のそれと同等になるように考慮しています。その理由は、この時点でのコマーシャル養豚場での子豚の飼料には、粗蛋白質がCP21% 以下の飼料を使うことはあまり無いことによります。また、添加アミノ酸以外の栄養素については「NRC1998 養豚」の6 kg-から10 kg- の子豚の栄養推奨量を使い、それらと同等かそれ以上のレベルに合わせています。

 

  報告全文は9点の表や図を交えた9ページに及ぶかなり膨大なものです。詳細に興味のある方は、米国畜産学会誌(J.Anim.Sci. 2006. 84:125-134)を参照なさることをお勧めします。

 

  因みに、研究者グループは、報告の中でも子豚用スターター飼料の粗蛋白質を下げ、いくつかの必須アミノ酸添加で補足することは注意深く検討しなくてはいけないと指摘しています。その理由には、他のアミノ酸が制限アミノ酸になり、子豚の成績を下げてしまう点を指摘しています。

 

更に、研究者グループが指摘していることは、試験結果からみて低蛋白質・アミノ酸添加飼料は有害な微生物代謝物を下げるので、離乳子豚の腸管の健康状態を保つための方策の一部として使えるとしながらも、そのような飼料は子豚の最適な成績を得られるということが要求されるとしています。

 

  同じ内容ではありませんが、このような趣旨の研究は、今までにも日本、米国や欧州からも出ています。恐らく、これからもこの方向性の中での色々な有意義な研究がなされ、今後も発表されることでしょう。上記の研究者グループの指摘などは、クリスタル・アミノ酸を製造している世界的な会社の研究基金と協力を得ていながらも、現在から近い将来の飼料原料需給の在り方を考える中で、とても公平なコメントをしていることは流石であると感じています(瀬良、2006)。