瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2006年2月 (130)
米国とEUのオーガニック市場
米国の経済研究局の経済専門家2名が米国とヨーロッパ連合が15カ国(EU-15)(2003年)のとき(2004年5月の10カ国新加入以前)のオーガニック市場に関して興味ある論文を発表しています。ヨーロッパ連合の15カ国とは、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガル、スペイン、スエーデン、英国(UK)です。
論文の詳細は省きますが、EUと米国を合わせて2003年の世界のオーガニック農産物小売販売額250億ドルの95%を占めていると指摘しています。2003年のEUのオーガニック農産物の販売額はほぼ130億ドル(100億ユーロ)でしたが、これは米国の104億ドル(80億ユーロ)を抜いています。しかし、国民一人当たりの販売額では、EUが34ドルで米国が36ドルでしたから、ほぼ同じです。
研究者の指摘では、ヨーロッパの、特に、西ヨーロッパのオーガニック市場は米国の市場よりも成熟しているし、1990年代に世界で最も早い成長を示したとしています。近年には、成長の伸びが遅くなった国もあり、EU全体の年当たり伸び率が平均7.8%だとしています。これから数年間のオーガニック販売の伸びの予測は、デンマークの1.5%から英国の11%
と幅があります。米国のオーガニック小売販売もEU同様に1990年代は年間の伸び率が平均20%と早く、2005年もその状態が続きました。2010年に向けて、成長は9〜16%程度と予測されています。
EUのオーガニック農業地として認証されているのは1997年の210万ヘクタールから、2003年の510万ヘクタールに伸び、EU農業地の約4%を占めています。米国のオーガニック農業地は1997年の549,406ヘクタールから、2003年の889,734ヘクタールへと増え、米国の全農業地の0.24%を占めています。従って、2003年のEUのオーガニック農業地は米国のオーガニック農業地の5倍あり、米国の場合は、全農業地がEUの全農業地の3倍ありました。2003年のオーガニック農業戸数は、EUが134,434件、米国が8,035件と大きく違います。
このようなことからも、EU連邦政府と米国政府のオーガニック農業分野に対しての政策の進め方は異なります。EUの場合は、オーガニック分野を伸ばすために積極的なアプローチを幅広い政策を持って行っており、オーガニック農業面積を増やすためにも政府のスタンダードや認証プログラムを含め、オーガニック農業者の補助政策やオーガニック管理にする土地目標、さらには研究、教育、マーケッティングを支持するための諸政策などを推進しています。米国の場合は、あくまでも自由市場の中で展開するアプローチを主にとっています。その政策の一貫としては、全米で通用するスタンダードや認証プログラムを通して市場開発を促進させ、連邦政府予算によるオーガニック農場のための研究、教育、マーケッティング開発基金の提供などがあります。
このEU連合と米国の政策展開は、農業、環境、エクステンション、オーガニック農業などに関して本来から存在する異なる歴史観や見解が絡んでsいます。多くのEU諸国では、オーガニック農業が環境に利益や利点をもたらし、社会にも社会的利益や利点をもたらすと考えられていますが、出来上がっている市場の中で競争するためには支持政策が必要な揺籃期にあると考えられています。オーガニック農業が公共に益する産物の生産提供者であるという考え方により、政府による経済的介入は合理的であるという考えも支持され成り立つことになります。
かたや、米国ではオーガニック農業が環境への良いインパクトがあることを認めながらも、オーガニック分野は生産者が市場を拡大する一つの主なるオポチュニティ(機会)であるとして扱い、オーガニック食品は消費者に対して提供できる区別化商品、同時に差別化商品でもあるとして捉えています。このような背景で政府機関が最終的には構築するスタンダードやラベルなどは、市場での流通を容易にし、消費者の産物・製品に対してのアイデンティティ、日本的に言えば本物かどうかということに関する懸念を緩和することに役立っています。
本報告の研究者ら(C. Dimitri & L. Oberholtzer, USDA-ERS, Vol 4. Issue 1, Amber Waves 2006.2.))の調査では、ヨーロッパの消費者はオーガニック農産物・食品を利他的な理由で購入することから利己的な理由、例えば、食品の安全性や健康面から購入するほうに移行してきているとしています。
個人的には、私は米国の経済研究局の経済専門家が著す論文は、連邦政府の予算も入り、広大な試験農場や研究・教育施設用の土地が貸し与えられている州立大学の学者や研究者が著す論文やその州や地域農業普及のためのエクステンション刊行物の内容同様に頗る高い公平性を維持していると思いますので楽しみな読み物の一つです(瀬良、2006)。