瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2006年3月 (131)
マイコトキシンへの関心は今後高まるでしょう
マイコトキシンは、メルクの獣医マニュアルなどでも詳細に指摘されていますが、俗に(植物性)病原菌やカビなどで発生する二次的毒素のことです。一般的に菌類やカビ類は、人間や家畜にとっても非常に有用なものも大変に多いのですが、中には、長期にわたって摂取すると肝臓、腎臓、神経系統やエストロゲンなどホルモン系統に好ましくない影響を及ぼすものもありますし、発がん性の要因になり健康を害するものもあります。
通常、マイコトキシンによる急性、或いは、慢性の症状は、敷き藁、乾草、牧草、サイレージ、或いは、濃厚飼料や飼料原料などが、温度や湿度と貯蔵状態や期間などで菌・カビ類が発生して二次的毒素(トキシン)がつくられる場合があります。また、そのような毒素がある環境に置かれていた上記のようなものが間接的に汚染されていた場合にもおきます。マイコトキシンの問題が想定されるときは、単独のトキシンの場合もあるでしょうし、いくつかのトキシンが複合して問題を起す場合もあります。
メルク獣医マニュアル(1998年第8版)では、マイコトキシンによる疾病原因の特徴として以下の6点を挙げています。
(1)原因が直ちに特定できない。
(2)動物から動物への伝染性はない。
(3)薬剤や抗生物質で処置しても疾病の状態に影響をほとんど与えない。
(4)勃発するときは季節的な場合が多い。特定の天候が続けて起きると、
菌・カビ類の増殖を促し、それらに起因する毒素の生産を増やす理由による。
(5)研究調査では、特定の飼料(原料)との関連がある。
(6)飼料原料を検査し、菌・カビ類が大量に検出されても、必ずしも毒素の生産が起きたことを示すことにはならない。
FDAが注意を喚起する食品・飼料中の総アフラトキシン・レベル・ガイドライン
牛乳を除く全ての食品 20ppb
幼動物と乳牛用のとうもろこし 20ppb
繁殖肉牛、養豚、成鶏用の
とうもろこしと落花生産物 100ppb
体重100ポンド(約45.4kg)
以上の肉豚後期用のともろこしと
落花生産物 200ppb
肉牛(後期)仕上げ用のとうもろこしと
落花生産物 300ppb
綿実粕(飼料原料用) 300ppb
その他の飼料原料 20ppb
牛乳 (アフラトキシン M1) 0.5ppb
(出典: Wood & Trucksess 1998、Whitlow & Hagler, Feedstuffs 年鑑2006年版より)
FDAが注意勧告する小麦・小麦製品中のジオキシニヴァレノール(DON)・レベル
全ての小麦粉、ふすま、胚芽など食品用の
小麦最終製品 1ppm
反芻肉牛、フィードロット中の月令4ヶ月以上の
肉牛、及び、養鶏用の穀類と穀類副産物
(これらの原料は飼料中、50%を越しては
ならない) 20ppm
養豚用の穀類と穀類副産物(これらの原料は
飼料の20%を越してはならない) 5ppm
その他の全ての動物用の穀類と穀類副産物
(これらの原料は飼料中、40%を越しては
ならない) 5ppm
(出典: Wood & Trucksess 1998、Whitlow & Hagler, Feedstuffs 年鑑2006年版より)
FDAの食品・家畜飼料業界向け総フモニシン(FB1+FB2+FB3)・レベル・ガイドライン
家畜飼料用とうもろこしととうもろこし副産物
馬と兎用 飼料乾物中20%以内 5ppm
養豚と鯰(なまず)用 飼料乾物中50%以内 20ppm
繁殖用反芻獣、繁殖用家禽、繁殖用ミンク、
産乳牛、及び、産卵鶏(乳卵は食用)を含む
飼料乾物中50%以内 30ppm
3ヶ月令以上で屠殺用に飼育している反芻獣
及び、毛皮生産のためのミンク
飼料乾物中50%以内 60ppm
屠殺用に飼育している家禽
飼料乾物中50%以内 100ppm
その他の家畜の種類や家畜のクラス、
或いは、ペット動物 飼料乾物中50%以内 10ppm
(出典より一部抜粋): Federal Register 2001-11/9、Whitlow & Hagler, Feedstuffs 年鑑2006年版より)
上記の3点の表は北カロライナ州立大学のホイットロー教授とハグラー教授がフィードスタフス誌2006年版年鑑に飼料中のマイコトキシンと題した論文の中で載せられたものです。詳細なディスカッションに興味のある方は、フィードスタフス年鑑(2006 Feedstuffs Reference Issue & Buyers Guide)を参照なさることを強くお勧めします。また、マイコトキシンについての数多い文献は、関連学会のネット検索で出ますが、アイオワ州エイムス市に本拠を置く「キャスト」のマイコトキシンに関する総説的文献“CAST Task Force Report, No. 139, 2003, Ames, Iowa”、ニュージーランドのルアクラ研究センター報告類(Ruakura Research Center, Hamilton, New Zealand)、FDAのフモニシンに関する官報 (Federal Register No. 218, Nov. 9, 2001) なども参照なさることもお勧めします。
余談ですが、米国では60年以上前から飼料・食品関係の技術者や研究者らは関は心を持っていました。私の先輩や同輩、友人に米国の食品や飼料の分析などを永年行っていた人も居ましたが、大昔から、例えば、ピーナッツ・バターを作る大手の会社は、製品中のアフラトキシン・レベルに最大の注意を払い、その当時の分析機器で出せる限りなく低い数値を求めていたことを思いだします。綿実なども同じ問題を抱える場合があります。
いうまでもなく、EU連合、日本などもマイコトキシンについては相応の関心を持っており、多くの研究や分析調査がなされてきています。それでも膨大な数の菌・カビ類の悪影響を調べつくしたというのにはほど遠いというのが国内外の専門学者の一般的見解でしょう。加えて、最近の先進国での消費者の傾向を見ていますと、将来、国内飼料・畜産業界でも飼料中のマイコトキシンなどの対応にも相応な関心が高まると思われます(瀬良、2006)。