瀬良英介の一般業界向け

飼料・畜産トピックス

2006年4月 (133)

穀類の蒸気圧ぺん前処理の影響など

仕上げ肉牛用飼料には、濃厚飼料としての組み合わせにとうもろこしと大豆ミールを使う場合が多いのです。そのとうもろこしの蒸気圧ぺん(スチーム・フレーク)工程前にフレークが良くかかるように前処理として加水などを更に行うことが多くの肥育農場や飼料工場で行われています。俗に、蒸気圧ペン加工前のテンパリングと呼ばれています。前処理が多いほど良いと考える向きもありますが、実際は原料や設計などにもよりますし、とうもろこしの前処理レベルを上げることは周辺状況とのコストの兼ね合いもあります。日本でもテンパリングに興味を持つ農場や飼料工場は多いようです。

 

  カンサス州立大学の研究者グループは一連の興味ある研究をいくつも報告してきていますが、加水の度合いや飼料価値などの最近の報告の一部を御紹介しておきましょう。この報告の場合、仕上げ用肉牛飼料に使う圧ぺんとうもろこしの密度は容積1リットル当り最大360gを良しとしていて、それ以上に加工する必要は無くコスト面からも合わないとしています。テンパリングは0、6、12%レベルで行っており、圧ぺんとうもろこし密度を低い容積1リットル当り310gもテンパリングのレベルは同じ3段階にしています。

 

とうもろこしの配合割合は、高密度の容積1リットル当り360g、テンパリング・レベルが0、6、12%の区で、総飼料乾物中、78.1, 78.1, 78.8%の順で、大豆ミールは、2.9, 2.9, 2.%の順で使っています。とうもろこしの配合割合が低密度の310gも同じテンパリング・レベルでとうもろこしと大豆ミールを同じ配合割合にしています。プレミックス、石灰石、尿素、食塩、ビタミン・ミネラル・プレミックスも高密度、低密度、それぞれの3段階に2.2, 2.2, 2.1%; 1.6, 1.6, 1.6%; 1.0, 1.0, 1.0%; 0.3, 0.3, 0.3%; 0.1, 0.1, 0.1% の割合で使っています。 ルーサン乾草は、高・低密度双方のテンパリング3段階に対して8.3, 8.3, 8.0%使っています。その他に塩化カリウムを0.3, 0.3, 0.3%、コーンスティープリカーを5.2, 5.2, 5.0%使っています。

 

テンパリング・レベルやフレーク密度が仕上げ期や屠体に与える影響を見るために去勢牛雑種78頭を使い106日間の個体給与試験を行っていますが、試験開始体重は415kg±30kgです。また、消化試験のために複数のフィスチュラ装着ジャージー種去勢牛6頭を使い15日間の個体給与試験を行っていますが平均開始体重は270kgです。

 

ビタミン・ミネラル・プレミックスは飼料乾物1kg当り供給量としてビタミン Aが 2,200IU, コバルトが0.1mg、ヨウ素が0.6mg、マンガンが60mg、セレンが0.3mg、亜鉛が60mg、銅が10mg です。

 

乾物量は高密度(360g/L)が、79.4, 74.2, 71.1%、低密度(310g/L)が79.8, 73.9, 72.0です。粗蛋白質は、高密度と低密度の順で、15.1, 15.8, 15.3%; 15.1, 15.7, 15.3%です。カルシウムは、0.71, 0.69, 0.68; 0.72, 0.70, 0.68の順、また、リンは、0.32, 0.31, 0.30; 0.31, 0.30, 0.32の順です。飼料には去勢牛1日1頭当りモネンシンを300mg、タイロシンを90mg与えるプレミックス(ルメンシンとタイラン、エランコ・アニマル・ヘルス、インディアナポリス)を供給するようにしています。

 

成績などの詳細は省きますが、研究者たちは水分やとうもろこしフレーク密度と肉牛の飼育成績や消化の度合いなどとの間には相関関係はほとんど見受けられなかったとしています。蒸気圧ぺん加工の前処理加水も飼育成績、屠体形質、また、消化率にほとんど影響を与えていないとしています。とうもろこしの蒸気圧ぺん調整が適切、且つ、充分に行われていたら、前処理としての加水で栄養的利点を付加しないとしています。従って、冒頭のように容積1リットル当り360g以上のフレーキングは消化や飼育成績などへの改善を検知できなかったとしています。然し、ディスカッションの中では、澱粉の消化は基本的にはとうもろこしのフレークを容積1リットル当り360gにすることで良いのでそれよりも軽い密度にすることは必要無しとしながらも、360gから310gに下げる中間の消化や飼育成績を予測することが出来ない点なども指摘しています。

 

この報告の詳細な成績などに御興味のある方は米国畜産学会誌(J. Anim. Sci. 2006. 84:424-432)を御覧になることをお勧めします。研究者の中の(E.C. Titgemeyer)ティトガマイヤー先生は、大豆ミールと他の代替植物性蛋白質ミール原料の違いなどを評価した論文も発表しておられるので米国では良く知られた専門家です(瀬良、2006)。