瀬良英介の一般業界向け

飼料・畜産トピックス

2006年5月 (135)

将来は養豚の栄養を考慮した大豆ミールの特性を選ぶようになる

大豆ミール(大豆粕)が世界各国の養豚用飼料の主な蛋白質給源として使われていることはよく知られていますが、それは同時に養豚産業の持続性を考えるときの主な要素でもあるアンモニア、糞尿生産、臭いなどのことも考慮の対象になっていくことを示唆しています。

 

  ケンペンなど研究者グループがオランダと米国で使われている大豆ミールの消化率にはそれぞれの国の地域的な変動がなく均質性が保たれていることを報告していますが、それは搾油工場でのミール生産工程が均一処理条件を維持出来ていることや、現在使われている大豆品種(搾油用の一般的なコモディティ大豆)の遺伝的な変動が無いというか非常に少ないことが使い易さのポイントとしてあげられます。

 

  確かに変動が非常に少ないということは現在の養豚飼料の品質管理という面からは便利で使い勝手がよいということになります。この点が単胃動物の飼料に大豆ミールが多く使われている最大の原因であることは周知のことです。然し、家畜の栄養を細かく捉えた観点から生産性を上げようと品種の選抜をする場合や搾油工程での処理方法を通して更なる部分的な改善を試みようというときには、品質が均一であることがかえって妨げになるという考え方も成り立ちます。

 

  北カロライナ州立大学の研究者グループ(van Kempenを含む計5名)は、将来の畜産産業が家畜生産性をより改善する原料を選ぶときに環境面の影響も最小にする方向で考えることが重要になるとしています。ここでは、その研究の極一部を紹介しますが、研究目的は大豆ミールの組成分中、どの成分が栄養価値を最大にし動物の糞尿排泄(成分)などを最小にするかという点にあります。

 

  研究には大学のデータベースにある72種類の中から8種類の大豆検体を選んでいます。大豆8種類の検体は各500kgとし、粗蛋白質(CP)、中性デタージェント繊維(NDF)、酸性デタージェント繊維(ADF)に最大の変動があるように選ばれています。尚、これらの大豆は通常の標準的な搾油生産処理をテキサス農工大学の油糧種子処理ラボが行い、それぞれのミールに仕上げています。

 

  試験(1)は回腸消化率をカニューレ装着した若メス(体重35kg±2kg)8頭を使い、ラテン方格、試験期間7日(5日間の慣らし、2日間のキームス採集・回腸内容物)で行っています。試験飼料(1)は、大豆ミールが唯一つの蛋白質給源(CP16%)となるようにコーン・スターチを39.6%-42.6%混入、脱皮大豆ミールを31.0%-34.0%混入することで調整しています。試験(2)は全消化管消化率、新鮮な糞と5日保存の糞の臭い、及び、糞からのアンモニア放出を調べるために8種類の大豆ミールから回腸での消化率や組成分に最も違いがある5種類を選び出して試験に使っています。試験には雑種の去勢豚(体重25kg±2kg)10頭を使い、5種類の飼料を5×5クロスオーバー・ラテン方格、試験期間7日(5日間の慣らし、2日間の排泄糞尿の採集)で行っています。試験飼料(2)は、5種類のどうもろこし・大豆ミール飼料の可消化リジン・代謝エネルギー比が同等になるようにとうもろこしを67.40%-71.20%混入、脱皮大豆ミールを24.20%-28.00%混入することで%調整しています。

 

  回腸での乾物消化率は最大で6%、蛋白質消化率が最大で8%認められています。これらの差は全消化管での乾物消化率では1.1%に減少し、蛋白質消化率では4%に減少しています。臭いの濃度には3倍の開きがあり、インビトロでのアンモニア放出では42%でした。組成分で唯一つ有意に変動があったのはスタキオースの消化率で、回腸での乾物消化率で負の影響がありました。測定した組成分中の変動で回腸での蛋白質の紹介率に影響を与えたものはありませんでした。

 

  この研究の結論として言えることは大豆品種間には栄養的な変動がそれなりにあるということです。また、低スタキオースは回腸での大豆ミールのエネルギー消化率を最大にするために重要であるとしています。加えて、組成分の変動からは回腸での粗蛋白質消化率の違いを説明することは出来なかったとしながらも、回腸での粗蛋白質の消化率を最大にすることは大豆ミールの栄養的価値を最大にすることにつながり、アンモニアと臭いの放出を軽減させることにもつながる可能性があることを指摘しています。

 

  この報告は9ページに及ぶ論文ですが、詳細に興味のある方は米国畜産学会誌(J. Anim. Sci. 2006. 84:1387-1395)を御覧になることをお勧めします。

 

  余談ですが、この研究は現在の米国や日本での養豚飼料産業全体が直ぐにこのような大豆ミールに切り替えて応用したり使用できるものではありません。今後の更なる研究が待たれる内容のものです。冒頭でも研究者が指摘しているように、現在使われている大豆ミール(粕)そのものの品質が非常に均一で安定している上に嗜好性の高い良質な蛋白質給源であるという点が利点ですが、その中から若干なりとも違いを見つけて今まで以上に環境面も考慮した大豆ミールを作り出せないかという観点が、将来、浮上してくる用途別大豆品種(大豆ミール)生産の方向の中での興味あることがらでであると指摘できます。このような研究には、手前味噌になりますが、北カロライナ州大豆協会や米国農務省北カロライナ農業試験場の資金なども部分的に投入されている点を指摘したいと思います。また、部分的に民間の会社名が論文中には使われていますし、民間会社の研究者が論文に名を連ねていますが、米国農務省としてはそれらトレード・ネーム(商品など)の保証をするものではないことは明記しています。また、米国農務省は他社の同様の商品などが論文に記載されていないことへの批判を受けるものではないと明記しています。

 

恐らく、将来は差別化養豚や差別化した肉の販売方法の一つとして、浮上してくる大豆ミールの一つになる可能性は高いでしょう。ただ、大豆の保管、搾油、ミール処理などを分別して行うのには国内、或いは、国外での流通や工場での相応の処理量と販売量に絡んだコストと価格の兼ね合いがあります。同じくは、そのような大豆ミールを使うことを希望する国内、或いは、国外の養豚生産者グループやインテグレーター、 スーパーや差別化店舗を含む豚肉流通販売をする食品産業、そして一般消費者の希望と浮動的な購買傾向などとの兼ね合いによって変わります(瀬良、2006)。