瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2006年5月 (136)
ウィスコンシン酪農とバイオ・セキュリティや動物愛護など
ウィスコンシン大学酪農学部の研究者2名が膨大な11ページにも及ぶ質問事項をつくりコンピュータによる任意抽出標準調査方法により選んだ酪農家(約1100戸)に飼養管理とバイオ・セキュリティなどの意識調査を二回にわたり行っています。回答率は約53%と高いので調査事項への関心が高いことを示しています。同時に意識調査や理解度のずれと難しさを含め示唆に富んでいる報告なので、その一部を御紹介しましょう。
調査対象は4グループに分けられていますが、大変に小さい牛群(279戸)が搾乳牛50頭かそれ以下、小さい牛群(202戸)が搾乳牛51頭から100頭、中程度の牛群(42戸)が搾乳牛101頭から200頭、大規模牛群(37戸)が搾乳牛200頭以上です。大規模牛群を経営する酪農家のほうが小さい経営の酪農家よりもバイオセキュリティに関しての管理を種々取り入れていますが、然しバイオセキュリティに関してのリスクは経営規模に関係なく存在しています。回答者の半分程度が牛を購入しているとしていますが、またその中の半分程度のみしか牛の健康状態の検査を行っていません。最も検査を行う酪農家は牛群規模が大きくなるにつれ増えています。生産者の約80%は抗生物質の使用量は、通常、「適切」であると信じていますが、使用に関しての記録などをきちんと取らしているか取っている農家は経営規模が大きくなるにつれ増えています。
大規模牛群と中程度牛群の経営者のほうがコンピュータで記録を取る割合が65.7%と高く、小さい牛群などの経営者の17.5%に比べ差があります。また、書類への記録記載を行う割合も大規模牛群と中程度牛群の経営者のほうが42.9%と高く、小さい牛群などの経営者の22.5%に比べ差があります。
酪農経営者の大部分である92.6%がヨーネ病は酪農産業にとって重要な課題だと信じていますが、ウィスコンシン州の公的ヨーネ病対策プログラムに加入しているのは9%のみです。ほとんどの酪農経営者である88.6%は除角が少なくとも小さい痛みを伴うものであるという認識がありますが、大半の81%の経営者は局部麻酔を使っていません。
生産者は自分達が最もよく知っているリスク(危険事項)については、最小にする努力をしています。生の牛乳を飲むことは人間の健康へのリスクではないと考える回答者が約半数居ましたが、BSE(狂牛病)が「危険性無し」と考えた回答者は唯の37%でした。生の牛乳は60%以上の酪農生産者が飲んでいますが、常に生の牛乳を飲んでいるというのは大変に小さい牛群の経営者の47.7%から大きい牛群の経営者の24.3%へと減少しています。また、生の牛乳を飲むことにはリスクが伴うことを認識しているのは大変に小さい牛群の経営者の46.2%から大きい牛群の経営者の56.8%へと増えています。大規模経営の農場経営者のほうがズーノーシスによる細菌感染など(動物から人間に感染する細菌などの疾病)が個人個々にに与える健康上の危険性に関しての知識を多く持っています。全体的に言えることは、大部分の管理事項の内容は牛群規模によるところが大きいのですが、酪農経営に関して重要事項だと信じていることについては経営規模に関係なく酪農経営者に一貫して存在します。本報告の詳細に興味のある方は米国酪農学会誌(J. Dairy Sci. 2006. 89-2297-2308)を御覧になることをお勧めします。
余談ですが、以前にも拙稿のパンフレットやトピックスなどでも紹介しましたコーネル大学やペンシルバニア大学が行った地域酪農の飼養調査とは内容が異なっていますが、このトピックスのウィスコンシン州は五大湖周辺に位置し、全米の中でも家族経営主体の酪農経営が多い州の一つです。州には乳牛も約110万頭居り、生乳出荷農家戸数も約16,500戸ありますから米国酪農のメッカとも言われる州です。
トピックスでは触れませんでしたが、調査した農家の経営規模が大きくなるほど反芻獣以外の家畜を屠殺解体した残渣物からつくられている肉骨粉や血粉を飼料用蛋白質原料として使う回数も傾向的に大きく増えています。私は、先月から今月始めに私用でシカゴに出かけていましたが、最近の流れの中では酪農用飼料にも高品質で知られる大豆ミールを蛋白質原料として使うことに、再度、関心が高まりはじめています。米国、南米、日本、中国、ヨーロッパなどの多くの国では、大豆ミールを養豚養鶏用飼料に使うのは極当たり前の普通のことですが、乳牛用飼料にも充分に使えるほどトン当たり価格が下がってきていますので、乳牛用飼料や反芻獣用サプリメントにも使う傾向が増えてきているように思われます(瀬良、2006)。