瀬良英介の一般業界向け

飼料・畜産トピックス

2006年6月 (137)

6月は酪農月間

米国では毎年6月が小売業界など酪農産業の全てを網羅した酪農啓蒙月間であることは以前にも何度か、講演、拙稿などを通じて発表し論評しました。今年も6月が巡ってきますと、米国各地のスーパーが酪農生産者のチェックオフ基金による「June Is Dairy Month」をそれぞれのやり方で啓蒙していることが目に浮かびます。先月、私用でシカゴに出かけたときも近くのスーパーで来月の酪農月間は何か考えているのかと聞いたところ、「勿論。この店独自のやり方を考えているし、全米酪農協議会(NDC)からヒントも貰っている」、と学童向けにも考えていることを話してくれました。

 

  確かに全米酪農協議会が以前からも指摘しているように、米国の酪農生産者は歴史的にはアメリカ酪農協会なども通して地元や地域での啓蒙活動に乳代から拠出するチェックオフを始めたのが、ほぼ91年前ですから大変な誇りを持って活動を持続させてきています。その中でもある時期からスーパーなど小売業界以外に特に力を入れてきていたのが消費者向けの啓蒙、学校給食向けの啓蒙、関係教育普及者向けの啓蒙などでしょう。

 

  今年から来年にかけての学校給食などでは新年度のアクション・プラン(啓蒙行動計画)で指摘している点に子供たちが酪農乳製品を好きであるのにもかかわらず、マンゴ・ヨーグルト・スムージーや何種類ものフレーバー入りの冷たい牛乳など、つまり子供たちの気をそそるような魅力的なプラスチック容器や販売機に入れて学校で提供してこなかったことを挙げています。それを如何に学校や乳製品業界に理解してもらって現場で取り入れて貰うかということが今年の課題のようです。6歳から11歳の児童中、71%の女子生徒と62%の男子生徒がカルシウムの日量所要量を満たしていないし、高学年の児童12歳から19歳では、実に88%の女子生徒と68%の男子生徒がカルシウムの日量所要量を満たしていないことを調査から挙げています。過去の一時期は、ハーレイデイヴィッドソンのオートバイを乗り回す革ジャンの若人がガソリン・スタンドで牛乳をぐい飲みしている姿にうっとりする店内のお嬢さんを取り上げ、若人が観るテレビ番組の時間帯のコマーシャルに頻繁に使っていたこともありますし、ミルク・ムスタッシュ(牛乳を飲んで口の周りに出来るひげ)を使っていたこともありました。

 

  その考え方の中身は近年変わってきていますが、低脂肪牛乳や乳製品を一人一日3回摂取することで9種類もの重要な栄養素の要求日量を満たすことになる点を指摘していることでしょう。カルシウムの90%、カリウムの33%、マグネシウムの24%、ビタミンAの30%、ビタミンDの75%、リンの60%、蛋白質の48%などを挙げています。2001年元旦号の「臨床獣医」に掲載された拙稿や講演では、アメリカでは消費者全体が蛋白質の25%、カルシウムの45%を牛乳・乳製品から摂取している点を指摘しました。最も、数年前の段階では、全米酪農協議会などでも米国の学校児童の年齢階層別の好みや摂取量を季節別にも細かく調べるところまではいっていなかったのですから、両者の数値を単純に比較することはできません。

 

  やはり今年の課題は一般的にも関心が高まっている「健康とフィットネス」を改善するために牛乳・乳製品を考え方の一つとして全国の学校環境の中で取りこんでもらうことを主眼においたようです。その協議会の活動の一部は日本でも購読されているウィスコンシンのホーズデーリィマン誌の6月号でも紹介されています。

 

余談ですが、日本での国内酪農の牛乳・乳製品の啓蒙活動は昔より大々的に行うようになってきているとはいうものの、その年毎の具体的な啓蒙活動や関連産業との連携は弱いと思わざるを得ない点が多々あります。その一つには、全国的な学校給食啓蒙という形で行うとき、米国のそれとは違い、一律に押すことに重点が置かれていることです。今までの両国の個に根ざした歴史的社会背景の違いからくるのだから仕方が無いといってしまえば身も蓋もありませんが、それが主な理由であるということは通用しなくなだろうと思います。児童が示す関心事項にむやみに、且つ、安易に迎合する必要は無いとしながらも、基本的な健康問題を解決していくためには児童の示す関心事項を前向きに駆使した啓蒙が必要であるという点も合わせて指摘できます(瀬良、2006)。