瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2006年7月 (139)
とうもろこし・大豆ミール授乳豚飼料のアミノ酸制限順位
イリノイ大学のイースター教授を含めた3名(ペティグリュウ教授とソルトウィデルら)は授乳豚用飼料のリジン含量を0.51%に保ったとうもろこし・大豆ミール飼料をつくり、アミノ酸のリジン、トレオニン、バリンの順位をプラズマ・ウレア態窒素で測定した興味ある試験を報告していますので、簡単に結果のいくつかをご紹介しておきましょう。
この試験にあたっては、クリスタルL−バリンの提供を味の素ハートランドから受けています。また、この試験は米国畜産学会が論文を受け取ったのが2005年6月25日ですが、正式に学会として受けつけたのが2006年2月7日で、学会誌に掲載されたのは2006年7月号です。
授乳中の母豚にとうもろこし・大豆ミール飼料を摂取させ、その間、相当な体重減少を起しているときのリジン、トレオニンとバリンの制限順序を調べるために試験を3種類行っています。
反応はプラズマ・ウレア態窒素(PUN)で見ています。試験飼料は3試験ともアミノ酸の給源はとうもろこし・大豆ミールからのみとした基礎飼料(BSL)を使い、リジンは0.51%になるように設計されています。基礎飼料をつくるにあたっては、とうもろこし・大豆ミール(17.2% CP, 0.90% Lys, 0.65% Thr, 0.82% Val, 0.28% Met)にコーンスターチ、シュクロース、大豆油を使って希釈し、とうもろこし対大豆ミール比が同等になるように調整してあります。
試験1はプラズマ・ウレア態窒素(PUN)を飼料中のトレオニン値やバリン値に対しての反応が敏感に出るか否かを調べ、また、試験期間4日間がPUN反応を見るのに充分かどうかを調べるために行っています。試験1の結果から、プラズマ・ウレア態窒素(PUN)が反応を見るのに使えることが判り、また、試験期間は4日間で充分であることが判りました。
試験2は、基礎飼料(BSL)のトレオニンとバリンが最大制限アミノ酸であるかどうかを特定するために行っています。試験2で使った各試験飼料は、(1)基礎飼料(BSL)に0.09% L-Lysと 0.02% DL-Metを添加してネガチブ対照区(NC2)とし、(2)(NC2)に0.14% L-Thrを添加し(NC2 + T)とし、(3)(NC2)に0.17% L-Valを添加し(NC2+V)とし、(4)(NC2)に0.14%L-Thrと0.17% L-Valを添加し(NC2 + T+V)としている。プラズマ・ウレア態窒素(PUN)の値は、(NC2 + T)区と(NC2 + T + V)区が(NC2)区と(NC2+ V)区より低かった(5.18と5.33対6.43と6.62;P<0.01)ので、(NC2)区ではトレオニン(Thr)が最大制限アミノ酸であることを示していました。
試験3は、基礎飼料(BSL)のトレオニンとリジンの何れが最大制限アミノ酸であるかを特定するために行っています。試験3で使った各試験飼料は、(1)基礎飼料(BSL)に0.02% Met のみを添加してネガチブ対照区(NC3)とし、(2)(NC3)に0.20% L-Lysを添加し (NC3 + L)とし、(3)(NC3)に0.14% L-Thrを添加し(NC3 + T)とし、(4)(NC3)に0.20% L-Lysと0.14% L-Thrを添加し(NC3 + L + T)としています。プラズマ・ウレア態窒素(PUN)の値は、(NC3 + L)区が(NC3)区と(NC3 + T)区より低かった(7.45対9.11と8.45 mg/dL; P<0.01)、そして、プラズマ・ウレア態窒素(PUN)の値は、(NC3 + L + T)区のほうが(NC3 + L)区のPUN測定値よりも低かったのです(5.94対7.45; P<0.01)。試験2と試験3の結果から基礎飼料(BSL)では、リジンが第一制限、トレオニンが第二制限であることを示しました。
試験3種に使用した供試豚の総頭数は母系C22(PIC)の32頭であった。試験1では8頭使い、試験2と3ではそれぞれ12頭使っていました。母豚は分娩施設にほぼ妊娠109日目に移し、試験飼料は分娩後の食欲回復を待つために授乳開始から3日目、4日目、或いは、5日目で与えるようにしていました。
試験3種にそれぞれ使ったネガチブ対照区(BSL, NC1, NC2, NC3)のとうもろこし・脱皮大豆ミールの配合割合は、とうもろこしが、各々40.36%、大豆ミールが各々13.46%です。計算分析値のCP%は、BSL, NC1, NC2, NC3の順序で9.85%, 10.08%, 10.08%, 10.08%、また、ME kcal/kgが、3,762, 3746, 3754, 3759でした。リジン%は、0.51, 0.60, 0.60, 0.51、トレオニン%は、0.37, 0.37, 0.37, 0.37、バリン%は、0.46, 0.46, 0.46, 0.46でした。
基礎飼料やそれぞれの試験飼料の実際の分析値とアミノ酸添加量なども詳細に報告されていますが、ここでは割愛します。
母豚が授乳中に相当の体重減少を起しているときは、とうもろこし・大豆ミール飼料中の制限アミノ酸は、リジンが第一制限、トレオニンが第二制限であることを示した報告です。以前に、この順序が逆であろうとして他の研究者の報告もあったが、今回の報告はその点と4日間の給与試験の中でプラズマ・ウレア態窒素(PUN)で反応を見る点を調べています。ただ、本報告の研究者らは、全授乳期間中での母豚と子豚の状態がどうであるかは今後の研究課題とするのが良いと結んでいます。
本報告は、的を絞った内容ですが、それでも表が8点入った8ページに及ぶ論文です。それぞれの試験などについての方法やディスカッション部分は緻密に書かれていますので、飼料開発部門や専門職の方で詳細を御覧になりたい方は、米国畜産学会誌(J.Anim.Sci. 2006. 84:1734-1741)を参照なさることをお勧めします。
余談ですが、イリノイ大学のイースター教授やペティグリュウ教授らが行う試験は、詳細、且つ、緻密な試験と分析を行うことで知られています。大豆ミールをとうもろこしと組み合わせた飼料がゴールデン・スタンダードであるという点を支持し強調しながらも、将来に向かって添加アミノ酸の効用や限界を公平に調べる研究者として知られています。個人的には、イースター教授は偏らない研究者であり教育者であるとかねがね尊敬している数少ない人たちの一人です(2006, 瀬良)。