瀬良英介の一般業界向け

飼料・畜産トピックス

2006年8月 (141)

大豆ミール(粕)等の粗蛋白質は乾物中%で言うのも一案

日本、米国、ヨーロッパ諸国でも養豚飼料や養鶏飼料の場合は、大豆ミール(粕)など飼料原料の組成分表示には原物中(as fed basis)の数値を使うのが一般的です。その場合、通常の大豆ミール(粕)の粗蛋白質はCP44%、脱皮大豆ミール(脱皮大豆粕)はCP48%、もしくは、CP48.5%というのが一般的です。最近では、水分を10%とした風乾重(air dry basis)をベースにした数値は現場では使われなくなっています。理由は、配合飼料に使う原料は主に乾燥した穀類のとうもろこしや大豆ミール(粕)等だからです。確かに、それらの原料は細かに云えば水分含量に若干の違いがありますが、一般的には水分が大体10%前後になりますので、風乾重の数値に似ているからです。

 

  私は、飼料や自分の食物の栄養を比較するときには、乳牛など反芻獣の飼料栄養で物を考えるので、乾物中(dry matter basis)の数値で比較するのに慣れています。どちらが正しいということではありません。水分含量は貯蔵している間にも絶えず変わりますから、蛋白質やアミノ酸などの数値は出来れば乾物中の割合や実量で比較するほうがより正確であると個人的に思っています。

 

  反芻獣である乳牛の場合などは、飼料原料として使うのは配合飼料やサプリメント、単品穀類原料ばかりではありません。栄養生理から考えても水分を若干含んだ牧草、サイレージ、ビール粕、とうふ粕などの粗飼料や食品産業副産物を使います。これら水分が多い原料と乾燥した穀類のように水分が低い原料を正確に比較するためには水分を計算から除去して、残った乾物中の栄養素の割合を計算したほうが配合設計、現場での飼料設計などが正確に把握できるのです。

 

  日米を問わず飼料関連技術者、或いは、酪農家でもそういうことを勉強しておられる方々は乾物中の数値で考えることに慣れておられます。然し、一般的ではないことも事実です。このことは、時折、売る側も買う側も判断が不確かになる場合があります。俗に言う原物中CP44%の大豆ミール(粕)は、乾物中の割合ではCP49%前後になります。何故ならば、水分が11%であれば、乾物は89%ですのでCP49%+になります(44 ÷ 89 = 49.4%)。同じように原物中CP48%の脱皮大豆ミールは、乾物では皮と水分を除いて計算しますから、皮の除き方如何によってはCP53%前後になります。日本でハイプロ・ミールと呼ばれるものは原物中の蛋白質をCP46%で調整している場合が多いですから、乾物ではCP51%前後になる場合が多いでしょう。これらも水分含有割合が8%と12%では完全に違います。

 

  日本標準飼料成分表「2001年版」の豚・鶏用原料と牛用の組成分には、同じ大豆粕(国際飼料番号:5−04−604)と大豆粕(脱皮大豆粕)(国際飼料番号:5−04−612)を使っています。分析値の標準偏差も出していますが、個々の検体数は出ていません。因みに大豆粕(ミール)は原物中の粗蛋白質がCP46.1%、乾物中の粗蛋白質がCP52.2%、水分は11.7%と出しています。また、脱皮大豆粕(脱皮大豆ミール)の原物中の粗蛋白質がCP50.7%、乾物中の粗蛋白質がCP56.2%、水分が9.8%と出しています。この分析値のみで大豆粕を全て同じように扱うと、種皮をある程度除いて搾油しているハイプロミールと称する製品は、通常の大豆粕(ミール)の分析と同じことになります。こういった理由からも、標準分析表は如何なる国の値でも参考にはできますが、実際に大量に飼料をつくるときには、調達して使用する原料のロットごとの分析を行う必要があります。そうでないとある程度の正確さをもった配合設計が出来ないことになります。また、ブロイラーや採卵鶏用、或いは、養豚用に大量の飼料をつくるときは、数パーセントの水分含有量の違い、皮の除去度合いが違う「脱皮大豆粕」や「ハイプロミール」によっては、蛋白質やアミノ酸の含有割合が大きく異なってきます。

 

  このような場合、職業柄、慣れている方は数値が何に基づいて出されているかの表示がないときには、乾物ですか?原物ですか?と聞くでしょう。また、収穫直後の大豆などの組成分を比較するときには、水分13%ベースでの数値ですか?と聞きます。米国では、乳牛関係の飼料栄養数値については乾物中に対しての数値として出すのが一般的です。日本でも北海道などの酪農経営者の場合は、乾物ベースの数値が使われていますし、セミナーなどでは乾物が一般的ですが、現場では、原物と乾物の両方が使われているケースも少なくないでしょう。同じようなことは他県についても言えるでしょうが、地域によっては乾物は使われていないのに等しいところもあります。また、米国では、養豚・養鶏関係の飼料栄養数値については現物中に対しての数値が一般的です。日本でも同様です。

 

  それでは、水分の多い原料である豆腐粕の場合を考えてみましょう。トウフ粕は、豆腐を作った後の残渣物ですが栄養的には優れています。人間が食べる場合は、オカラと呼ばれていて日本の家庭での惣菜料理の一品であることは周知のことです。最近では、若い人も食物繊維などの観点から、お婆ちゃんが作っていた「卯の花」を思い出し、オカラを買って作る人たちが出てきています。しかし、オカラは搾ってあっても水分が多く短時間で風味が落ち、酸敗が早いので、スーパーでも豆腐のように沢山扱っているところは少ないのです。どちらかと言えば、豆腐や豆乳工場会社では、厄介なものとして扱い、処理や開発に苦労しています。苦肉の策として、豆腐自体にオカラを超微粉にして入れて全てを豆腐として食べてもらうか、豆乳として飲んで貰うことを商品したところもあります。安易に使う方法としては、生か準なまの状態で家畜用の飼料として与えるのが多いのです。バクテリアで特殊な発酵をさせる方法もありますが、オカラのネックは乾燥製品をつくるコストにあります。

 

したがって、豆腐屋や豆腐製造工場の近くで酪農や養豚を経営している人たちは、直接にトウフ粕を調達して飼料の一部として使っています。トウフ粕の一般分析値を見れば、乾物中1キロ当りの粗蛋白質は約26%、粗脂肪は約13%、可溶無窒素物が約33%、粗繊維が約15%と非常に栄養価が高く素晴らしい原料です。豚に対してのエネルギーも高く、乾物DEが約3.2Mcal/kg、或いは、TDNで約72%有ります。牛の対しては、豚のそれらよりも高く、乾物DEが約4.2Mcal/kg、或いは、TDNで約94%有ります。このようなことから、トウフ粕が乳牛、肥育豚、肉牛などに与えられているのです。

 

  何処が錯覚を起こしやすい留意点かといえば、トウフ粕の水分は約75%から80%含む状態で一般的に流通していることです。これらは、生のビール粕などと同様に水分が高いので栄養価について錯覚を起こして失敗することがあります。飼料原料を比較するときには、乾物当りの栄養価で比較することに慣れる必要があることは冒頭でも述べました。

 

  トウフ粕の水分は高く、含まれている粗脂肪(油分)の約50%は不飽和脂肪酸のリノール酸です。それは素晴らしい脂肪酸ですが、同時に、不飽和であるということのために酸化が早く、品質の劣化が進むのが早いのです。酪農家がトウフ粕を入手すると、特に、夏場の取り扱いについては出来るだけ早く給与することを常としているのは、この品質の劣化が進まないうちに牛に与えてしまいたいからです。同じような理由は、肥育豚に与える場合などにも当てはまります。

 

  また、水分の高いトウフ粕を不用意に乳牛に相当量与えると、気がつかない内に不飽和脂肪酸の高い油分を過分に与えてしまい、乳脂肪の低下や、場合によっては牛乳の異臭の原因になることもあります。

 

高水分のトウフ粕を生の重量(原物重量)で6キロから8キロ与えたと仮定しますとと138グラムから184グラムの油分を大豆油として与えることになります(例:8kg × 2.3% は、 8kg × 0.023 = 0.184kg = 184g)。この量を大豆油単独で与えると、牛の生産量や乾物摂取量にもよりますが、通常は、乳脂肪がかなり下がります。それ以外に綿実など油分を含む原料を単品で与えている場合は、総飼料乾物摂取量の中の油分の総量が高くなり過ぎます。

 

醤油粕の留意点は、一般分析表からも判るようにナトリウムと塩素、つまり食塩のレベルが乾物で約7%(2.91+4.01=6.92%)と高レベルにあるということです。最近では、低塩の醤油などもつくられていますから、醤油粕によっては食塩が5%程度のものもあります。然し、一般的には、醤油粕の乾物1キロには、70グラムから80グラムの食塩が入っていると考えてよいのです。一般分析表から大豆粕(ミール)のナトリウムは0.03%、クロール(塩素)が同じく0.03%と低いです。とうもろこしも大同小異です。アルファルファなどもナトリウムは約0.05%、クロール(塩素)が約0.58%と低い。

 

基本的に食塩と呼ばれるものは主にナトリウムとクロールから成り立っていますから、与えている他の飼料原料中のナトリウムや塩素のレベルも考慮すると実際に食塩として与える量は若干少なくしてよいのです。乳牛に醤油粕を与えるときの最大の留意点は、この食塩のレベルです。醤油粕は乳牛にとって嗜好性もよく、通常、板状か顆粒状で流通し、給与し易い形態になっているので、酪農家によっては栄養要求量をあまり考慮せずに安易に乳牛に多く与える傾向がありますが、それは薦められません。

 

因みに、イリノイ大學のハッチェンス教授がNRC2001(乳牛)に基づいて推奨しているナトリウムとクロールの値は、飼料乾物中、乾乳前期が0.10%と0.13%、乾乳後期(分娩前)が0.14%と0.20%であり、分娩後が0.34%と0.20%、泌乳前期が0.22%と0.29%、泌乳中期が0.23%と0.26%、泌乳後期が0.22%と0.24%です。

 

また、豚の場合、イリノイ大学のイースター教授やホリス教授は、20kgまでの子豚は食塩(塩化ナトリウム)として0.45%、それ以外の肥育豚全期間と授乳豚や妊娠豚について食塩として0.35%を推奨しています。これは、NRCの場合と同様に原物(as fed basis)としての含有割合、言い換えれば乾物90%(水分10%含有した状態)に対しての割合です。

 

醤油粕やトウフ粕を養鶏用に使うことは滅多にありません。家禽飼料のナトリウムとクロールのレベルについては、アメリカ大豆協会が以前に何度も日本に招聘したアーカンソー大學のウォールドロップ名誉教授が次のように推奨しています。ブロイラー飼育全期間のナトリウムとクロールのレベルを雄雌ともそれぞれ0.15%と0.15%レベルで統一した値を推奨しています。このレベルは、季節や条件によって調整が必要であることも指摘しています。産卵鶏のナトリウムとクロールのレベルも、一日一羽当り飼料摂取量が80グラムのとき0.19%と0.16%レベルを推奨し、100グラムのとき0.15%と0.13%レベルを推奨し、120グラムのとき0.13%と0.11%レベルを推奨しています。つまり、採卵鶏の一日当り飼料摂取量がかなり違う季節にも調整を必要と指摘ているのです。確かに、冬場の環境であれば寒いですから体温維持のためにも余計に食べますし、夏場の環境であれば、食べる量は減ります。成長、維持、産卵などに必要な栄養分の量は、ある条件下では一定ですから、条件が変わることで摂取量が変われば、栄養分摂取を一日当りの飼料摂取量に対して同一にするためには計算し直さなくてはなりません。

 

追記になりますが、水分を10%含み、乾物が90%(原物)の値を乾物中の栄養分の値にすると、約10%数値が高くなります。大豆粕(ミール)CP44%の場合、(44 / 90 = X / 100: 90X = 4400:X = 4400 ÷ 90 = 48.9)で、乾物中の粗蛋白質は48.9%になります。同じ計算方法で、原物重量で示されている脱皮大豆粕(脱皮大豆ミール)CP48%を乾物重量で示すと粗蛋白質がCP53.3%になります。 逆に、乾物100%の値を乾物90%(原物)に直すと、数値は約10%低くなります。

 

豚には通常は水分を多く含む原料を与えません。穀類など普通に乾燥した原料を使います。それらの原料には水分が約10%含まれているところから前述のように乾物を風乾重(水分10%)と同様の意味合いで乾物90%として数値を出している場合もありますが、使用量が多いときは、実際に測定して分析値を出し、場合によっては、水分含量を除いた乾物中の栄養値を出しています。前述の風乾重(air dry basis)はあまり使われなくなりましたが、水分10%で乾物90%をベースにした数値を風乾重と呼ぶこともあります。繰り返しますが、通常、豚や鶏用配合飼料、或いは、牛用の配合飼料原料は、乾燥した状態の穀類や植物性蛋白質原料を使っていますので、原物重量と風乾重とはほぼ似通っているのです。

 

筆者は、最終的には、全ての家畜の栄養計算には、水分を多く含む青刈り飼料、サイレージ、或いは、トウフ粕やビール粕のような原料の数値比較も含めて原物重量と水分0%乾物100%ベースによる乾物中(dry matter basis、或いは、DM%)で栄養価を比較するのがよいと思っています。

 

水分が8割近くもある原料を「安い」と思い、遠くからトラックで輸送しても、後で乾物1キロ当たりの輸送経費で算出し直してみると原料や栄養分単位当たりのコストが高くて驚くことがあります。水分を非常に多く含む原料よりも大豆粕(ミール)やとうもろこし、或いは、配合飼料、サプリメント、また、良質乾草などのほうが農家の庭先で下ろしたときの1キロ当りの実質的価格が割安になっている場合が少なくないことに気付かれることが多いでしょう。

 

ウィスコンシン州ミルウォーキー周辺のビール工場からビール粕(生)を酪農家が調達する場合、トラック運賃とビール粕の乾物1キロ当りの栄養価などの兼ね合いから、季節によっても異なりますが、輸送距離は半径100マイル(160キロ)あたりが限界だと判断する人たちが多いのと似ています。特に、2006年はガソリンやディーゼル燃料の価格が高騰しているので、ビールの生産量と余剰具合にもよりますが、この輸送距離は更に縮まる傾向があります。農家によっては、輸送距離は半径50マイル(80キロ)程度に落としたところもあるかもしれません。日本国内の生トウフ粕などの調達についても同様の考え方をすることが重要です(瀬良、2006)。

 

 

 

 

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