瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2006年12月 (149)
飼料の分離がコマーシャル産卵養鶏や卵質に与える影響
採卵鶏用飼料ではマッシュ形態の飼料が養鶏産業界で多く使われていますが、それは経済性、柔軟性、そして簡単であるという理由によります。然し、この形態の飼料は、かなり広範囲なパーチクルサイズ(粒度の大きさ)が出来てしまうという現実があります。例えば、製品中の大きな粒度の原料は小さな粒度の原料から分離してしまうということが、オーガーやドラグチェイン等で飼料のデリバリーを行うときに起きます。主に篩いの影響や横から横の幅の影響で分離が起きることは判っています。これらの分離を起すパターンは鶏が餌を啄ばむときに大きな粒度のものを選び、結果として鶏の栄養要求日量を満たすということに影響を与えてしまいました。
この報告はシステム的に行った研究ですが、飼料栄養素の関係、飼料パーチクルサイズの分布、また、体重や卵質などのパーフォマンスを調べたものです。飼料分離の問題が鶏のパーフォマンス(成績)や卵質に与える影響を最低にするために飼料製造や飼料のデリバリー周辺でできること三点を推奨しています。
ここでは、ペンシルバニア州立大のプリを含む三人の研究者(M. Puri, P.H. Patterson, P. Tang)がコマーシャル養鶏場の協力を得て長期間調べた報告内容で推奨している三点を御紹介することにします。
(1)この報告で指摘している飼料パーチクルサイズ(粒度)や栄養素の分析から判ることは、鶏はビタミン、ミネラル類、そして、アミノ酸の一部を充分に摂取していなかったということです。パーチクルサイズが(<1,180μm)、1,180μmより小さいものは飼料給餌槽(細長い飼い桶)の中で底に沈んでしまいましたし、大きな粒度のものは上に浮き上がり鶏が先に啄ばんで摂取してしまいました。この結論は鶏の成績から確認できました。観察の結果から、影響を受けるのは卵質や体重のみならず、小さな粒度の栄養素が効果的に利用されていないという点を含んでいることです。
(2)この結果と過去の報告にある飼料の絶対的パーチクルサイズとサイズ比率などの関係から言えることは、飼料給餌システムは飼料が連続的に攪拌できるようにし、飼料デリバリーのときの分離を最低にするよう改善することです。結果として、粒度の大きいものを好む鶏が、粒度の小さいものを選り好みすることなく摂取することになります。
(3)飼料産業界は飼料パーチクルサイズの分布を狭める努力を試みるか、または、飼料製造段階で小さい粒度のものを減らす努力をすることによりパーチクルサイズの分離を最低に抑えるようにすることです。
この研究をするにあたっては、ペンシルバニア州にある総羽数が80万羽のコマーシャル採卵農場の協力を得ています。試験に使った鶏舎数は2棟ですが、1鶏舎当りケージの列は6列でケージ各列は3段ケージになっています。試験には1列目の上部の256ケージと最下部の256ケージを使い、各ケージ(61×51cm)では10羽を飼育しています。一つの鶏舎はオーガー(39-mm 直径、0.38 m/s)で他方はドラグチェイン(70 mm直径、0.30 m/s)を使っています。鶏舎の給餌システムの長さはホッパ―を出てホッパーに戻るまでの長さが約330mですので一辺が150mに幅が2mです。当時使われていた鶏種はハイライン W−98(白色レグホン)で21週令から63週令までの1産卵生産期を1年かけて行っています。
データの詳細やディスカッションに興味のある方は(2006 J. Appl. Poult. Res. 15:564-573)を参照なさることをお勧めします。ペンシルバニアの報告で興味のあることは、大型のコマーシャル養鶏の協力を得ていること、また、飼料のサンプリングもホッパーからホッパーに戻るまでの長い飼槽の間の4箇所から6箇所で取って分析していることなどでしょう。
余談ですが、米国のみならず日本でも養鶏業界で使われる育すう・産卵鶏配合飼料の形態は、マッシュ飼料が主体でほぼ95%を占めるでしょう。したがって、飼料工場で作られる配合飼料、委託配合飼料、或いは、農場でつくる自家配飼料もマッシュが主です。工場でつくられたマッシュ飼料を適切に農場に輸送し、飼料ビンに入れ、その飼料を適切に鶏に与えることが求められます。栄養の面から見ると、産卵鶏の成長、維持や産卵と卵質のためには、エネルギー、アミノ酸類(蛋白質)、ビタミン類、カルシウムやリン、マンガン、亜鉛など重要なミネラル類、そして、必須の微量な栄養素も適切に混ざった状態で飼料ビンから、給与システムのホッパー、そしてオーガーやドラグチェインやそれらに準じる給与システムを通して毎日の栄養要求量が与えられ、しかも鶏がそれを万遍なく摂取することが大事なのです。これは口でいうほど簡単なことではなく、これまで何十年の間に数限りない試験が発表され、改良が加えられてきています。未だにこれだという決定的なことは私の個人的見解です。経営規模や他の要因が変わるたびに、養鶏生産者やインテグレーターがよく発するコメントは、「鶏舎を作り給与システムなどを作った時点で違う観点や可能性が見えるが、ベストをつくした中での決定だからこれで行こう」、ということです。
大豆ミールは産卵鶏用飼料の重要な蛋白質部分であることは周知のことですが、やはり鶏舎の長さが長くなり自動給餌システムが種々開発されてくると飼料の分離の問題は古くて新しい検討事項であろうと思います。いくら大豆ミールや穀類だけきちんと摂取してくれていても、粒度が微細で分離をしてしまっているビタミンやミネラル類が適切に摂取されていなければ、最終的には鶏の全体的なパーフォーマンスに良からぬ影響を与えます(瀬良、2006)。