瀬良英介の一般業界向け

飼料・畜産トピックス

2006年12月 (150)

カナダでの大掛かりな乳房健康調査結果

乳牛の飼育の中で乳生産・乳質の面からも関心が高い事項は乳房炎の発生を如何に下げるかと言う点ですが、全米乳房炎協議会が纏めた管理の10項目が長い目では役立つと考えられています。カナダはプロビンス(州)ごとに、その点の関心事項を生産者の段階で大掛かりに纏めたものはありませんでした。ここで言う全米乳房炎協議会が出している注意を払うべき管理の10項目(NMC Mastitis Plan with Ten Areas of Attention, 2004)は多義に渡っていますが、その内容は、すでに日本でも主な乳生産地帯では紹介され、日本的に咀嚼修正したものも使われています。

 

ここでは、タイトルにあるようにカナダの調査結果をいくつか御紹介することにしましょう。報告を行っているのはプリンス・エドワード島大学大西洋岸獣医学部の研究者、バーキーマとライケリンク)の2名です(H.W. Barkema and R.G.M. Olde Riekerink, University of Prince Edwsard Island, Canada)。

 

全カナダ9州(プロビンス)におけるバルク・タンクから検出されたスタフィロコッカス・オーレウス(Staph. aureus)の累積的割合は、大西洋岸側(東部)からノバスコーシャが92%、プリンスエドワード島が85%、ニューブランズウィックが88%、ケベックが80%、オンタリオが72%、マニトバが63%、サスカチワンが90%、アルバータが69%、そして、ブリティッシュ・コロンビアが39%でした。

 

乳房炎管理のための推奨プログラムはカナダにおいても良く受け入れられています。然し、まだかなりの改良を行う余地は残されていました。何故ならば、バルクタンクの生乳から分離されるスタフィロコッカス・オウレウスとの関係は有意にあったからです。スタフィロコッカス・オウレウス・ポジテイヴの牛群割合は予想通リに高かかったのですが、プロビンスによって異なりました。ストレプトコッカス・アガラクティエ・ポジティヴ(Strep. agalactiae-positive)の牛群割合は低かったし、傾向として少なくなっていることを確認しました。臨床での乳房炎は、スタフィロコッカス・オウレウスが最も頻繁に特定された細菌でした。

 

産乳牛の牛舎タイプとしては、西側(太平洋岸側)のブリティッシュ・コロンビアとアルバータの2プロビンスの酪農経営ではフリーストールが主体です。ケベックは最も酪農産業が大きいプロビンスですが、酪農経営の90%が繋ぎ牛舎(タイ・ストール)です。サスカチワンから東部のノバスコーシャに至る7プロビンスについては、ケベックの90%、オンタリオの60%を除き、他は全て40%プラスです。

 

この報告は図2点と表3点からなるものですが、冒頭でも書きましたように、全カナダのプロビンスを網羅する初めての大掛かりな調査ですので、詳細に興味のある方は全米乳房炎協議会の地区会議の論文録(NMC Regional Meeting Proceedings 2006,pp1-7)を御覧になることをお勧めします。

 

  余談ですが、乳房炎を如何に減らす管理をするかという点で万能薬的な管理や処置はありませんが、研究者は報告の一部に繋ぎ牛舎(タイ・ストール)とフリーストール牛舎の分布とスタフィロコッカス・オウレウス・ポジティヴ牛群の比率はプロビンス間でかなり相違あるので、プロビンスごと、及び、牛舎のタイプに合わせた普及活動と教育(エクステンションと教育)をする必要があるとしています。

 

  乳房炎は古くて新しい問題です。大豆ミールなどを使って適切な飼料栄養バランスをとっても乳房炎をコントロールする管理が適切でなければ、何処の国においても酪農経営者にとっては大きな問題であり、経済的な損失でもあります。

 

  早くも2006年の最後月のトピックスとなりました。本トピックスをいつもお読みくださり、また、今年も種々のリクエストを数多く頂戴し有難う御座いました。若干なりとも、お役に立っている面があるとすれば、誠に嬉しい限りで、心からお礼を申し上げます。どうぞ2007年が皆様にとって公私ともに良い年でありますように心から願っております(瀬良、2006)。