2006年産米国大豆の品質
セス L ネイブ博士
ジェームス H. オーフ博士
概要
アメリカ大豆協会では1986年からアメリカ産大豆の品質調査を支援している。この調査は、海外顧客を対象として翌年の買い付け時の参考にしてもらうための新穀の品質データを提供することを目的としている。一部例外となる地域があるものの、2006年は高収量にめぐまれて上々の作況であった。品質面では、2005年の収穫ときわめて類似している。
2006年の作付面積、収量、総生産量
アメリカ農務省の推定では、2006年の作付面積は3,020万haに上ると見られる(表1参照)。これは2005年の作付面積の4.4%増に相当する。平均収量は、2.89トン/ヘクタールになる見込みで、2005年の数値(2.89トン/ヘクタール)にほぼ匹敵する。アメリカ全体では、2006年の生産は過去最高を記録すると思われ、推定生産量は、2005年の総生産量を3.9%上回る8,730万トンである。西部および中南部諸州では、旱魃のため収量は伸びなかった。
2006年アメリカ産大豆の品質
2006年8月21日、生産農家5,036軒にサンプルキットが送付された。生産農家は、回答の分布が大豆の生産にほぼ合致するよう、各州の大豆生産の総作付面積をもとに選出された。2006年11月3日までに受領した試料は1,593件を数える。これら試料は、ミネソタ大学で開発された検量方程式が組み込まれたPerten社のダイオードアレイ装置、DA7200(スウェーデン、フッディンゲ)を用いた近赤外線分光法(NIRS)で、タンパク質と油分の含有量が分析された。分析結果は表2のとおりである。
1.アメリカ大豆協会およびアメリカ大豆輸出協会の対アジア品質ミッション(2006年11月13日〜21日)用資料
2.ミネソタ大学(ミネソタ州セントポール)作物栽培学科助教授兼植物遺伝子学科教授
タンパク質と油分の分析結果について
アメリカ産大豆の2006年新穀のタンパク質と油分の平均含有量は、2005年分の品質調査の結果と比較すると、類似するものの若干低かった。地域別分析から、西コーンベルト諸州ではタンパク質、油分ともに2005年産ときわめて似通ったプロフィールを持つものが産出されているのに対し、東コーンベルトはタンパク質、油分のいずれも昨年よりも下回っている。南部諸州産出の大豆では、2005年産よりタンパク質は少なく、油分が若干多い傾向が見られた。
可溶性糖分
海外の顧客のなかには、アメリカ産大豆の可溶性糖分の含有量に関心を示す業者がいる。従来の湿式化学分析やNIRSといった手法では、可溶性糖分を正確に定量するのは困難である。さまざまなタンパク質含有量と原産州を代表する早期収穫されたサブセット(40)を試料とし、湿式化学分析法を用いて可溶性糖類の含有量が分析された。これら試料の全可溶性糖分含有量にはかなりの幅がある(乾物ベースで22.1〜141.0 mg/g)。スクロース、ラフィノース、スタキオースはそれぞれ2.36〜83.8、4.27〜9.51、15.5〜55.9 mg/gと、個々の糖質でも同じように含有量の差が見られる。表4にはアメリカ北部から収穫された試料22件と南部の試料18件について、タンパク質、油分、可溶性糖分の平均含有量が示されている。サンプル数はきわめて小さいものの、南部産と北部産の大豆には糖分で大きな違いが認められる。南部産試料のスクロース含有量は北部産試料の40%に過ぎなかった。この違いは未確認の環境要因の影響によるものかもしれないが、大豆の品種が影響している可能性も排除することはできない。
中西部の気候の概要
中西部の4月の気象条件は、優良作柄年となることを約束するものであった。気温は平年よりおよそ2℃高かった。降水量はネブラスカ、アイオワ、イリノイ、インディアナ各州で平年を上回る傾向にあった。その結果、2005年には平年降水量を大きく下回ったイリノイ州の渇水状態が大いに緩和された。
5月は中西部で、厳しい冷え込み、雪、あられ、浸水、極端な高温とめまぐるしい変化が見られた。このような天候下で、最北の生産州では作付けに遅れが生じた。このひと月を通してインディアナ、ケンタッキー、イリノイの各州では平均気温を約2℃下回り、アイオワとミズーリでは平年に比べると少雨傾向にあった。
6月の気温は中西部全域で平年を下回る傾向にあり、いくつかの地域では降水量が平年を大幅に下回った。南北ダコタ州およびミネソタ北西部でも、アイオワ中部とイリノイ中部同様、降水量の少ない状態が続いた。
7月は中西部全域で暑く、ミネソタとウィスコンシンの平均気温は平年を2〜3℃上回った。降水量については、ミネソタと南北ダコタで平年よりもかなり少なかったのに対して、インディアナ、オハイオ、ミシガンでは平年の2倍近い雨量があった。
8月の気温は全州で平均を上回り、特に中西部の南部域(ミズーリ、ケンタッキー、およびイリノイ、インディアナ、オハイオ各州の南部)では平年に比べるとかなり暑かった。平年を上回る雨量でアイオワとサウスダコタに続いていた水不足が緩和されたのを別にすれば、降水量は中西部全域で平均的であった。
9月は中西部全域で平年よりも涼しく雨量も多かった。アイオワ、ミネソタ西部、ケンタッキー、イリノイ南部、インディアナ、およびオハイオいずれの州でも、平年をはるかに上回る降水量があった。この雨による収量の増加はほとんどなく、かえって多くの生産農家で収穫が遅れる原因となった。
10月は(特にウィスコンシン、ミネソタ東部、アイオワでは)平年に比べると著しい低温傾向にあった。イリノイ、インディアナ、オハイオでは多雨で収穫に遅れが生じた。
西部および中南部諸州の旱魃
2006年、中西部では旱魃による深刻な被害を被った州は少なかった。しかし、西部諸州(ノースダコタ、サウスダコタ、ネブラスカ、カンザス、オクラホマ)と中南部のいくつかの州(ルイジアナおよびミシシッピ)では、旱魃が重大な影響を及ぼした。州内においても程度の差こそあれ、旱魃は2006年の大豆生産シーズン全体にわたる傾向があった。旱魃に見舞われた州では適時に降水量が不足したため、収量は平年を下回っている。
中南部および西部諸州の旱魃は、大豆の作柄に大きな影響を及ぼした。作柄は6月下旬になって急激に悪化し、その状態はいくつかの生産地で降雨が見られるようになった8月上旬まで続いた。旱魃被害はアメリカ農務省の週間作柄報告(図1参照)でも、はっきり指摘されている。作柄の傾向は、旱魃がシーズン半ばに東コーンベルトを襲った2005年のものとよく似ている。
大豆サビ病
大豆サビ菌(Phakopsora pachyrhizi)は、南米では収量に多大な損失をもたらすものとして周知されている大豆の病原菌である。サビ病がアメリカ本土で最初に報告されたのは、2004年11月である。サビ病は胞子で広まるが、越冬には冬場でも生存可能な生物宿主を必要とする。アメリカでは、フロリダとテキサス最南部のクズ(葛)と呼ばれる草に付着して越冬することが知られている。2005年、2006年いずれの年でも、商業生産用大豆にサビ病が大発生している。これまでのところ、サビ病は2005年よりも広範囲に広まっている。両年とも、最初にサビ病が確認されたのは6月で、フロリダ州に限られており、7月時点ではその周辺州に限られた。8月はいずれの年も、確認された件数は比較的少なかった。ところが2006年の9月に、2005年にサビ病の発生が確認された地域をわずかながら越えて発生していることが判明した。2006年11月7日現在では、15州、227郡でサビ病の発生が報告されている。サビ病であると確認できるのはほとんどの場合、生育期の後半になってからで、アメリカでは殺菌剤処理が施された栽培地は少なかった。
低リノレン酸大豆
大豆油は主にパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸という5種類の脂肪酸で構成されている。従来の大豆油に含まれるリノレン酸は平均すると約8%である。この脂肪酸は酸化安定性に劣る。そのため、大豆油に部分的水素添加処理をしてリノレン酸のレベルを下げ、この処理により潜在的な悪臭を削減している。水素添加の工程中に、脂肪酸のトランス異性体が生成される。アメリカ政府が2006年1月から食品加工業者に製品中のトランス脂肪酸含有量の表示を義務付けたことから、トランス脂肪酸に対する関心が高まった。加工食品が大部分を占め、総体的に脂肪含有量の高いアメリカ人の食事に含まれるトランス脂肪酸が及ぼす有害な影響に、政府は懸念を示している。政府としては、消費者が自主的にトランス脂肪酸の摂取を減らしたり避けたりできるよう消費者に周知させることが望ましいとして、トランス脂肪酸を規制していない(一部都市では、規制を設けようとする動きがある)。
アメリカの大学や種子会社の中には、リノレン酸含有量の低い(1〜3%)大豆の品種開発に取り組んでいるところがある。こうした品種から採れる大豆油は部分的水素添加処理を経ることなく、食品メーカーや製パン・製菓業者で用いられている。そのため、これら品種を利用することで、「トランス脂肪酸を含まない」という製品表示が行えるのである。2006年にモンサント、パイオニア、アソイヤの各社が低リノレン酸大豆の栽培で生産農家と契約した作付面積は、約75万エーカー(約30万ヘクタール)に上る。これは来年には3倍に拡大するものと思われる。こうした特殊用途大豆の伸びは目覚ましいものがあるが、アメリカ産大豆に占める特殊品種の割合は現在約1%に過ぎない。
アメリカ産大豆の2007年生産見通し
アメリカのエタノール業界は、目下すばらしい成長を遂げている。トウモロコシを利用してバイオ燃料を生成しているエタノールプラントはアメリカ国内ではすでに100ヵ所を越え、さらに50プラントが建設中である。これらプラントが使用するトウモロコシは、2006年産で5,400万トン以上となる。バイオ燃料に利用されることで米国産トウモロコシの価格が維持され、その結果、アメリカでは大豆用農地の一部をトウモロコシの栽培に転用する農家が出てくる可能性がある。農地の転用がどの程度になるのかは不明であるが、多くの農家にとって輪作あるいは作付け方式を変えるのは困難である、という点を理解しておくことが重要である。(トウモロコシのあとに大豆という輪作よりも)トウモロコシの連作のほうが収量は落ち込む結果となり、病虫害によるさらなる減収を引き起こす。燃料、肥料、農薬の追加投入コストを要することから、ほとんどの農家では農業経営の大幅な転換は困難であろう。大豆専用農地に大きな変化が生じるという予測はあるが、アメリカの生産動向はほとんど変わらないだろう。
Charts & Tables attached
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